treasure

□夕焼けの図書室
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私の彼氏は何処でも寝れる不思議な先輩。
そしてとても優しくて強い、自慢の先輩。





「祐一先輩!図書室行きましょう!」

「珠紀がそう言うのは珍しいな」

「…私だって読みたい本くらいありますよ」

頬を膨らませ珠紀がそう言うと祐一は優しい笑顔で珠紀の頭をぽん、と撫でる。
珠紀はそれが嬉しくて、祐一の手を取ると図書室に向けて歩きだした。





オレンジ色に染まる図書室は人気もなく静まり返っている。
珠紀は祐一から少し離れた本棚を眺めていた。

「んー。…あ、この本」

そっと手にした本は少し小さめでページ数もあまり多くはなさそうな本。
表紙に狐が描かれたその本に珠紀は心奪われた。

「狐…祐一先輩…」

「どうした?」

「あ、祐一先輩」

くるりと振り向いた珠紀の手にある狐の本。
祐一はそれを見ると僅かに微笑む。

「珠紀が探していたのはその本か?」

「いえ。でも…なんだか読んでみたくなって…。祐一先輩は読んだことありますか?」

「ない」

「なら一緒に読みましょう?」

珠紀は嬉しそうにそう言いその本を祐一に手渡した。

「そうだな。珠紀がそう言うなら読んでみよう」

「はい!その後は二人で縁側でゆっくりしましょう」

「ああ。もちろん珠紀は膝を貸してくれるな?」

「ふふ。当たり前です」

珠紀と祐一はその本を持ち図書室から出る。
オレンジ色はやや暗くなり星が疎らに散っていた。





「この本に惹かれた理由はあるのか?」

「なんででしょう?暖かい感じがしたから、かな?」

「暖かい感じ?」

「はい。…この本を読めばわかりますよ!」

ぐいと祐一の手を引き走りだす。そんな珠紀を祐一は誇らしげに見つめていた。

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