夢見る子供たち

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私は。


人魚姫の話が。 





大嫌い、だった。









何故、命まで捨てなければならないのだろう
何故、二人は幸せにならなかったのだろう
何故、人魚姫は人間を好きになったのだろう
何故、声を捨ててまで王子に近づきたかったのだろう
何故、王子は気づかなかったのだろう

何故、自分を気づいてくれないような人間のために、命を落とすのだろうか



何故、何故。何故?







「ねぇ。人識くん?人識くんなら、どうする?」


「何が?」

「その、もしも私が人魚姫だったら。王子様は人識くんなの」

「さぁな。網にかかったら助けてやるよ」

「うわー。人魚はそんなものにかからないよーだっ」

「ははっ」

「でも、気づいてくれないと怒るからね」












王子に恋した人魚姫は(殺人鬼に恋した人間は)



自分の声を犠牲に(声と共に自分の生も)



声をなくした人魚姫は(声もなくした、たった一人の少女は)




それでも王子を愛した(王子の元へと歩いていった)







「・・・・、・・・」

「どうした?」

「・・・く、・・・ぁ」

「はいはい、」







最終選択。




人魚姫は、


刀を、


取った…





(アイシテル、とは言えない。それでも――)






END

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