夢見る子供たち

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『人識』

「何だ?」

『あのさ、』


好きだよって言おうとした。だけど怖くて言えないの。だってそうでしょう?幼なじみの腐れ縁でしか無いのに何時からか離れられなくなっていただなんて。拒まずに隣に居てくれる人識には感謝している。だけど、その人識の優しさに甘えているだけの子供でしか無い私に、その言葉を言える権利なんて無い。人識にはもっと、お似合いな人が訪れるんだから。そう言い聞かせてから、人識の方に彼女とか作んないの?と質問を投げ掛けた。(それでも痛む胸は)(もう貴方しか救えない)


「彼女なら作ってんぜ?」

『違うわよ、一生…愛せる人』


私は貴方しか居ないわ、なんて言えるのは心の中だけ。自分で発した言葉に傷ついてから、下唇を噛み締める。(行き場の無い悲哀を、)(私はどうすればいいの?)人識は暫く鳩が豆鉄砲喰らったような顔を見せてから、いつも以上にかははと笑った。いつも通りの人識に、情けなくも涙がこぼれそうになる。


「鏡は人類最弱にして欠陥製品の戯言遣い、そいつに人間失格と呼ばれたーーこの俺が、か?」

『…殺人鬼である前に、人間失格と名を刻んだとしても。……元はただの、人間じゃない』


私の言葉に傑作だ、と再び笑ってから考える素振りを見せた。まずは、だ。人識は人差し指を突き出した。何をやってもサマになるのね。素敵だなんて想いながら、まずは?意味が分からず首を傾げながら、人識の言葉を反復してみる。すると頷いてから、こう言った。




「俺を愛する人間なんていない」







目を開けて、私を見て

(ここにいるわ、)(愛してるの!)
 

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