おもちゃ箱
□管理人の駄作置き場 「La Dolce Vita」
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「La Dolce Vita」
今日は、いつもよりずっと早く帰られる。
それが嬉しくて、和希はウキウキした気分で車に揺られていた。
そんな機嫌の良さそうな和希が、突然秘書である石塚に声をかけた。
「石塚、La Dolce Vitaって店、知ってるか?」
和希は後部座席から、助手席に座っている秘書に問いかける。
石塚は少しだけ考えて、即答する。
「…あぁ。今人気のあるパティスリーですね」
「さすが、良く知ってるな」
仕事の出来る秘書は、情報を集めるのが得意だ。
上司である和希の恋人は、お菓子作りもプロ級。
デートでもよくスイーツの美味しいカフェを利用する、そんな可愛らしいカップルがそばにいると、自然とその方面の情報は仕入れてしまうのだ。
「そこに寄って帰りたい」
和希がそう望むのなら、それを叶えるのが秘書の仕事。
石塚は、運転手に行き先変更を告げた。
今日は、久しぶりに、夕方に本社を出る事が出来た。
寮に帰るのが午前様というのが続き、朝から篠宮に説教されるのにももう慣れてしまった。
それ位、忙しい日々だった。
今日はたまたま会食の日時が変更になり、それなら急ぎ以外の仕事を明日に回して身体を休めようという事になった。
テキパキと仕事を片付け、学園まで車で帰る途中ふと思いついたのだ。
忙しくて寝顔しか見られない恋人に、お土産を買って帰ろう、と。
いつもならコンビニしか開いてないが、今の時間ならまだ開いている店も多い。
あの子が食べたいと言っていたケーキ屋の名前は…。
それで、和希は優秀な秘書に聞いてみたのだ。
案の定、彼はその店を知っていた。
本当に良く出来た秘書だと感心しながら、背中をシートに預けた。