おもちゃ箱
□管理人の駄作置き場・3(WEB拍手)
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『あなたは魔法使い』
「好きだよ」
「好きだよ」
「君が好きだから」
そう言われて、抱きしめられて、そっとキスされて。
「うるさい」
「ウザイ」
「近寄らないで」
いつもそう思ってたのに。
いつの間にか、それが普通になって。
会えない、話をしない、そんな日は、何だかむしゃくしゃしたりする。
啓太があの人と幸せそうに笑っている姿を見て、心の中で悪態をついたりしていたのは、いつまでだったか。
今は、啓太の幸せそうな顔を見たら、ホッとする。
これは、あの人がかけた魔法?
そんな風に思いたくないけど、あの人の声を聴き、ぬくもりを感じるのが幸せ?
でも、啓太に本当の笑顔を見せられるようになった自分が、少し好きになった。
あの人が、俺に笑顔を取り戻させた。
しょうがないけど、そう思う。
「好き」という言葉が自分を好きになる呪文だとしたら、やっぱりあの人は俺にとって魔法 使いだ。
何回も、何十回も、俺に呪文で魔法をかけたのだから。
本人には絶対言わないけれど。
救われたのは確かだから。
俺もいつか、魔法を使う時が来るだろうか。
それが、あなただったらいい。
少しだけ、そう思った。
おわり