おもちゃ箱

□管理人の駄作置き場・2(短編集)
1ページ/12ページ



熱情




燃えるような感情。

心。

身体は熱くて、止められない。

暗い部屋。

見たくないものを隠してくれる、闇。

聞きたくなくても聞こえる、吐息。

自分を隠してくれるのか、それとも曝してしまうのか。


「ん・・・」

「遠藤、口開いて」

そろっと口を開けた瞬間、奪うように舌が入り込んできた。

息も出来ない、苦しい。

奪われるだけなんて自分には合わない、そう思い、相手の舌を捕らえ、絡ませる。

時々聞こえる水音が恥ずかしい、なんて、そんな事を考える余裕もないけど。

「君が好きなんだ」

熱い言葉。

熱い身体。

熱い気持ち。

この熱さに、いつの間にか惹かれていた。

「ごめんね」

一言そう聞いた後、身体に衝撃が走る。

「っ!!」

激痛に、声もきちんと出ない。

思わず涙が出そうで、瞳を閉じる。

お互い、じっとしたまま動かない。

和希は、ふと目を開ける。

そこには、心配したような、でも熱を帯びた顔があった。

その顔を見たら、ふと力が抜けて痛みが少しマシになった。

和希は、腕をそろそろ上げて、成瀬の首に巻きつける。

「遠藤?」

「早く」

「何?」

「動け」

「でも、」

「じゃあ止めますか?」

「・・・止めない」

ぐっと動き出す。

「あっ」

小さく吐息が漏れる。

痛い。

熱い。

あなたの熱さが移ってきたのか、ひとつになって溶けてしまうような感覚。

こんなに痛くて、でもこんなに気持ちの伝わる行為はない。

そう思うと。

好きです。

好きです。

好きだよ。

好きだよ。

気持ちが伝わる、身体の繋ぎ方。

新しい恋が始まる。

痛くて、熱くて、優しく始まる。

あなたの熱が、俺を溶かしていく。

いつかは、あなたの気持ちを追い越して、あなたを溶かしてあげられるように。

しっかり、恋をしていきたい。






おわり
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ