おもちゃ箱

□管理人の駄作置き場(短編集)
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「二人分」



「和希v今日仕事終わったら、僕の部屋に来てねv」

言うだけ言って、俺の前から消えてしまった彼。

和希は「まぁ、いいか」と思い、そのまま仕事に向かった。

そして仕事が終わり、自分の部屋に帰ろうとした和希は、ふと思い出した。

そういえば・・・部屋に来いとか言ってたような?

本音を言えば、自分の部屋に帰りたい。

疲れがピークに達していて、相手を出来ないと思うから。

別に会いたくない訳じゃなくて。

会って寂しい思いをさせるよりかは、と思ってしまうのだ。

でもそのまま無視すると、彼の事だからいつまでも待ち続けるだろう。

しょうがない・・・とりあえず顔だけでも見せておくか。

そう思い、和希は通いなれた道を歩く。

彼の部屋まで。


コンコン。

もう夜の12時を少し過ぎているので、控えめにノックする。

すると、ドアは勢いよく開いた。

「和希!」

そう言って成瀬は俺の腕を掴むと、自分の方へぐっと引き寄せる。

「なっ」

「来てくれたんだね!嬉しいよ!!・・・とその前に『おかえり』」

「・・・ただいま」

成瀬は片手で和希の腰を抱いたまま、もう片方の手を和希の顔にあてる。

「寒かったんだね?すごく冷たいよ」

そう言って添えられた手は温かくて・・・ついウトウトしそうになる。

そうならない前にと、和希はここへ自分を呼んだ用件を聞く事にした。

「で、何か用ですか?」

「え?何かって・・・今日はクリスマスイヴだよ?」

「それが?」

「だって世間では恋人同士が甘い時間を過ごす日だよ?」

「・・・」

疲れた身体に鞭を打ってきた俺って・・・。

「ねぇ、和希!見て見て!」

その声に、和希が視線を移すと・・・そこには料理が乗っている小さなテーブルが見えた。

「?」

訳がわからないという顔をする和希に、成瀬は自慢げに言う。

「ふたりでクリスマスパーティをしようと思って作っておいたんだv」

嬉しそうに話す成瀬に、ため息をつく和希。

そんな和希にお構いなしに、成瀬は話し続ける。

「ほら、ここに座って」

成瀬は床に置いた柔らかくてフカフカしたクッションを、ポンポン叩いて促す。

ニコニコ笑う成瀬に、和希は諦めた。

しょうがない・・・少し付き合うか。

そしてクッションの上に座ると、成瀬は和希の隣りに座る。

「で、なんでフォークが1本しかないんですか?」

目の前に並べられている料理には、フォークとスプーンが1本づつしか用意されていなかった。
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