おもちゃ箱

□管理人の駄作置き場(短編集)
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「それは、こうするんだよvv」

そう言って、「あ〜ん」と言う成瀬に、和希は顔を赤くする。

「ふざけないでください!帰ります!」

そう言って、立ち上がろうとする和希の腕を掴み、強引に座らせる。

「誰も見てないんだし・・・いいじゃない?」

成瀬は甘えた声でそう言って、和希の顔をみつめる。

「・・・」

「・・・・・・」

いつまでもじっとみつめてくる成瀬の視線に、和希はふと目をそらした。

・・・しょうがない。

今日2回目の『しょうがない』。

こうなったらとことん付き合うか。

「で、どうすればいいんですか?」

「じゃあ・・・まずは何から食べる?ケーキは自信作だよ!」

「じゃあケーキ・・・」

和希がそう言うと、成瀬は嬉しそうな顔をしてケーキを突き刺す。

「あーんv」

「ん・・・」

口を開けて、ケーキを食べさせてもらう。

これは・・・かなり恥ずかしい。

人がいなくても、恥ずかしさで狂いそうだ。

「・・・甘い」

口の中は、まるで成瀬そのものの様に甘くて。

「・・・飲み物」

飲み物は・・・まだ用意してない?

「あっ、ごめんね。和希が帰ってきたら温かいのを淹れようと思ってたんだ」

そう言って立ち上がろうとする成瀬の腕を、和希が引っ張る。

「じゃあ飲み物は俺が淹れます。紅茶でいいですか?」

「え?和希が淹れてくれるの?」

「不満ですか?」

「ううん、嬉しいv」

和希は立ち上がる。

「じゃあちょっと借りますね」

そして、ゆっくりゆっくり・・・紅茶の葉を蒸らして淹れた。

「・・・美味しい」

成瀬は和希の淹れた紅茶を一口飲んでそう言った。

「それは良かった・・・」

和希も温かい紅茶を口に含む。

「和希みたいだね」

「何がですか?」

「ゆっくりゆっくり・・・僕を満たしてくれる」

微笑みながら言う成瀬に、和希は少し見惚れてしまう。

「じゃああのケーキは・・・成瀬さんですね」

「僕?」

和希は意地悪な顔をしながら言う。

「甘さがくどい」

「ひどいな、和希は。でも丁度いいじゃない」

成瀬は少し拗ねた顔をしながら言う。

「甘いケーキとストレートの紅茶は相性抜群だよ!」

そう言って成瀬は、和希の頬にちゅっとキスをした。

成瀬が離れていった自分の口唇を、そっと拭って和希は苦笑した。

「はいはい。あなたには負けました」

今日の和希は、成瀬に負けっぱなし?

それも今日だけ。

今日は聖なる夜のくれた、気まぐれだから。

だから今だけは・・・幸せを感じさせてあげるよ。




おわり
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