おもちゃ箱

□SS
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成瀬さんと俺が座るテーブルは、正方形の白いシンプルなテーブル。

二人しか座れない。

座っていると成瀬さんの膝と俺の膝が微かに当たってしまうようなサイズ。

彼の部屋の唯一のテーブルが、それ。

しかも、そのテーブルには、色とりどりの料理が並んでいる。

そして、真ん中には小さいガラスの花瓶に入った白い小さな花。

それは、かつて体験したことのない「食卓」だった。



成瀬さんに「今夜はご馳走作るから部屋においで」と言われて、素直にやって来た自分。

冬休み。

年末年始は寮の管理人も休みになるため、BL学園の生徒たちは、皆帰省する。

けれど、成瀬さんは、テニスの練習の関係で(プロのコーチを受けているのだ)都内にマンションを借り、
長期の休みになっても実家がある北海道には帰らずそこで過ごしているらしい。

その部屋に、俺は、彼と恋人という関係になって初めて招待された。

初めて入った成瀬さんの部屋は、一人暮らしには適度な広さと思われる2DK。



インテリアはとてもシンプルで清潔。

だけど、至るところに、彼らしいセンスの良いアイテムを発見しては、俺はその度にまじまじと観察してしまい、
成瀬さんに「遠藤は可愛いね〜」と連発されてしまっている。

何故彼が「可愛い」というのか意味が理解出来ずにいるけれど・・。



「僕は丁度良いよ。近くで僕の料理を食べてくれる遠藤を見ていられるんだからね。寮ではこうはいかないよ」

「そうですか・・・」  俺は、何も言えず俯いた。寮の食堂でこんな至近距離はありえない。

もし、そんな風に出来るとしたら、彼の部屋のベットの中だけ・・。

身体の奥がツキンと、甘く痺れる。

俺は、慌てて今、思い出してしまったことをかき消した。

何を考えているんだ!?俺は!!

「あのね、このテーブル遠藤といつか一緒にこうしてご飯が食べられたらいいなって思って買ったんだ」

俺の内心を知ってから知らずか、成瀬さんいきなりそう切り出した。

「え?」

その言葉に、俺は顔を上げる。

成瀬さんの顔を見ると、優しい視線にぶつかる。

俺の鼓動がトクンと静かに鳴った。

「それこそ、僕の気持ちが遠藤に通じる前の話なんだけど」

一方、成瀬さんは、その瞳をパチンとウィンクしてみせた。

「前の話?」

「うん。そう。だから、こうして一緒に食卓に居ることがとても嬉しいし、幸せだよ」

成瀬さんは、沢山の言葉を俺にくれる。

素直じゃない自分には決して口出来ない言葉を彼は、簡単に、けれど心を込めて俺にくれる。

成瀬さんが、そうして本当に幸せそうに微笑む姿を見て、俺の胸が切なくなった。

悲しい切なさではなく、愛しい切なさ。

「馬鹿ですね・・もし、俺が貴方の気持ちを・・受け入れなかったらどうするつもりだったんですか・・?」

ずっと、追いかけて来てくれた人。
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