忍びの卵達
□鬼の撹乱?
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牧之介が風邪をひいた。
昨日、戸部に勝負を挑みに忍術学園に来た牧之介。
いつもの様に学園の運動場で勝負する事になり、きり丸が整理券や飲み物等を売っている。
ただ、今回は最初から牧之介の様子がおかしかった。
牧之介の瞳は虚ろでしっかりとは戸部を見据えてはいなかった。
しかし、誰もその事に気付かず戸部と牧之介の試合は進行された。
二人の試合はいつもまともには終わらない。
まるでギャグの様にオチがある。
そのオチを目当てで試合を見に来る者も少なくはない。
今回の試合は牧之介が途中で倒れてしまったのでオチなどなかったが
見ていた者は「丈夫なのだけが取り柄の牧之介が体調を崩すなんて」などと囁きあっていた。
牧之介が倒れたのを見た戸部はすぐに抱き上げて医務室へ走っていく。
おおっぴらにはしていないが二人は恋仲、心配しない筈がない。
勢いよく医務室の襖を開ける戸部。
そこにいた新野先生と善法寺は驚いた顔をするが牧之介の様子を見て顔色を変えて診断し始める。
戸部はその様子をじっと見ていた。
「牧之介……」
「大丈夫ですよ、戸部先生。ただの風邪ですから」
「……良かった」
「でも、今ちょうど熱冷ましをきらしていて……」
自己治癒に任せるしかない、と呟く新野。
「まぁ、心配はいりませんよ。あの、牧之介ですから」
言葉とは裏腹に牧之介から目を離さずにいる新野を見てあまり良くないのだと悟る戸部。
戸部は握り拳をつくりながら自分の無力さを悔いた。
牧之介……、
必ず元気になってくれ。
五月蝿いくらいのお前の方が愛おしい。
元気になればいくらでも勝負してやる。
だから、早く良くなれ。
──花房牧之介。
FIN.