忍びの卵達

□ありがとう
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噂によると今日は中在家先輩の誕生日らしい。
急に知った誕生日だから何も用意できなかった。私は先輩の恋人なのに何も知らない。
きっと同じ委員会の雷蔵の方が先輩の事を知っているだろう。

「どうしよう……」

先輩に何を渡せば良いのだろうか?
先輩の好きな物がわからない。読書が好きなのは知ってるけど。

「三郎、どうかしたのか?」
「誕生日の贈り物……」
「ああ、中在家先輩への誕生日の贈り物を考えてたのか」

私の隣にハチは腰をおろした。
私はハチを横目でみた。

「なんも、悩む事ないじゃん。ようは祝う気持ちだろ?」
「そうだな……」

何か思い立った私は立ち上がりハチに「またな」と言って立ち去った。
中在家先輩はどこにいる?委員会で図書室だろうか?
それとも七松先輩に連れられて鍛練?前者ならば図書室、後者ならば裏山、運動場etc...

「あれ、三郎じゃない、どうしたの?」
「中在家先輩、知らない?」
「中在家先輩なら先輩達が誕生日だから祝ってやるって言って連れてったよ?」

確かに六年間、一緒にいるのだから祝わない訳ないよな。
まして先輩達は今年で卒業だ。

(戦場で敵として出会う可能性だってある……)

「だけど、出来る限り早く帰って来るって言ってたよ?」
「え……何で?」
「確か本当に祝ってほしいのは別の人だからって言ってたけど…」

先輩が帰って来たら「生まれてきてくださってありがとうございます」って言おう。






FIN.
(先輩、誕生日おめでとうございます。そして生まれてきてくださってありがとうございます)
(お前に祝ってもらえるのが一番、嬉しい)

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