忍びの卵達

□結末
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死ネタ注意










雑渡さん……。
タソガレドキ城、忍組頭。



こんな風に敵として逢わなければ、僕はきっと……





忍を目指す者にとって情は邪魔なモノ
特に敵の忍者に対しての恋情なんてもってのほか。



だけど、僕は好きになってしまった。
あの人を……

叶わぬ恋だと理解はしているけれど。






気持ちが止められない。


もしも、出逢わなければ
もしも、味方だったなら







§結末§







「雑渡さん……」

「私は君の敵だよ?早く止めを刺しなさい」



あの時、僕が止めを指さなければ
あの人は助かっただろうか?


勿論、助ければ僕は忍術学園に居られなくなっただろうけど



あの人は忍術学園に癒しを求めて来ているのだと部下の人が言っていた。


あの人は癒しを求めていた。
この戦場を嫌っていたのかも知れない。






今から思えば
あの人は忍術学園にいる時、とても穏やかな目をしていた。



それに僕が止めを刺したときあの人は……




伊作くん、ありがとう……

そう言った。



あの人は感謝してくれた。
自分を死なせた相手に


雑渡さん、貴方の事を本当に愛していました。



貴方が忍術学園に顔を見せてくれるのが嬉しくて楽しみでした。









「伊作、学園に帰るぞ」


留さんはそう呟き、雑渡さんの亡骸を埋めた場所に座り込んでいた僕の体を立ち上がらせた。




あぁ、もうすぐ日が暮れる。



空があの時、見た雑渡さんの血のように赤く染まっている。










「留さん」

「なんだ?」

「僕がした事は間違ってなかったよね?」



僕は自分がした事を正しい、とも間違っている、とも言えないけど
留さんならどちらか答えてくれそうだから



「お前は忍として行動した。それは俺たち、忍として正しい行動だ」



「そう…だよね」



「後悔してんのか?」




後悔…していないと言えば嘘になる。
だけど、雑渡さんはそれを望んでいた。


己を殺す様に、と
雑渡さんは言った。



雑渡さんを殺さなければ、違う結末もあっただろう。



でも、そんな事を今更、言っても仕方ない。
雑渡さんは最期にありがとう、と言ったのだ。
きっと、あの人の最期は幸せだったんだ。




「後悔…してないよ」

「そうか」





僕も雑渡さんも忍として正しい事をした。
誰も間違っていなかった。


今は戦乱の世、忍にとって常に生きるか死ぬかの世の中。
己の行動を悔いては生きていけない。





学園に戻ると門の前に
井桁模様の忍装束が見えた。





「お前を慕ってる保健委員の一年…だな」

「そうだね……」





温かな日射しの様な笑顔を向けてこちらへ手を振っている。
僕は走っていく。





「ただいま」





精一杯の笑顔を作り、一年たちに見せる。
そして、笑いながら一年を抱き締めた。












「お帰りなさい、善法寺先輩、食満先輩」

「「ただいま」」





FIN.
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