忍びの卵達

□熱
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「食満先輩」
「……なんだ、不破雷蔵に変装している鉢屋三郎」

鉢屋を見つめる食満。鉢屋は食満に抱きつく。

食満は驚いた顔をするがひとつだけとはいえ後輩に抱きつかれるのは嫌ではないので笑みを浮かべる。抱きついてきた鉢屋の頭を無意識に撫でる。



「食満先輩、子供扱いは止めてください」
「すまない。つい、何時もの癖で……」

ムスッとした鉢屋の表情を見て謝罪する食満。食満の謝罪を聞き「…気をつけて下さい」と小さく鉢屋は呟いた。食満は鉢屋の機嫌がなおったようなので安心した。それからふと空を見上げ

「雨、降りそうだな……」
「そう…ですね」

鉢屋も空を見上げて呟く。するとポタポタと雨粒は落ちてきてどんどん雨が酷くなっていく。鉢屋と食満はとっさに近くの用具庫で雨をしのぐ。

「通り雨だといいが…」
「酷い雨ですね……」

2人揃って空を見つめる。ほんの少し経った時、食満は鉢屋の体が少し震えているに気づく。それを見て食満は上着を脱ぎ鉢屋に被せる。
驚いた表情を見せる鉢屋だったが本当に寒かったようで食満の上着を被りながら「ありがとうございます……」と小声で呟いた。食満は笑いながら鉢屋を抱き締める。鉢屋は顔を真っ赤にして焦る。
(片恋の相手なのに……)



「最初に抱きつかれた時も思ったが鉢屋は体温が低いんだな」

鉢屋を抱き締めながら食満は呟いた。鉢屋の体はどこもかしこもひんやりとしていてまるで雪に触れているかのようだ。己の体温をわけてやりたいと食満は思った。







◆熱
(己の体温が少しでもこの冷たい体を温められればいい)(貴方の熱で溶けてしまいそうになる)






FIN.
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