忍びの卵達
□夕焼け
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「鉢屋先輩、ちょっと良いでしょうか?」
綾部が鉢屋の自室に訪ねてきた。
綾部と鉢屋が恋人同士であることは同室の不破も知っているので
「…三郎、僕、図書委員の仕事があるから行くね」
気を効かせて不破が部屋から出ていくと綾部は鉢屋に抱きつく。
鉢屋は抱きついてきた綾部の頭を撫でながら「どうした?」と呟く。綾部は鉢屋に抱きついたまま
「私…実習で初めて人を殺しました」
四年生になれば実習で人を殺す事になる。それは進級に関わってくるため拒む事は出来ない。
鉢屋も四年の時、実習で人を殺した。鉢屋はその時、初めて人を殺した訳ではなかったので平気だったが初めてだった綾部には辛すぎたのだろう。
「……殺した時は平気だったのに夕焼けが血の色のようで…」
そういえば空は綺麗な赤い夕焼け空。夕焼けの赤が血の色を連想させたのか。鉢屋は何も言わずに綾部をずっと抱きしめる。夕焼けの赤が血の色を連想させるのならば自分の体で赤を隠す。
「平気になるまで何度でもこうする。だから、綾部、そんな悲しい顔すんなよ、な?」
綾部は小さく頷いて顔を上げ少し笑みを浮かべる。
「今はそれでも良いですよね?」
「当たり前だろ?私はお前の恋人だぞ?」
「……はい」
いずれは離れてしまうだろうが一緒にいられる今はこのままで……。
◆夕焼け
(三郎って男前だよねぇ、夜は乙女なのに…)(なぜ、それを!?)(そりゃ、それだけ背中にキスマークがあったらね(笑))
FIN.