PH

□太陽と月
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彼は、月のようだと思った。





太陽






「…………何してるんだ?」
「あ、ギル。」
ギルの問いに、俺は「なんか眠れなくて」と答えた。
「………さっさと寝ろよ。」
「わーかってるって。」
ギルってばお母さんみたいなこと言ってーと冗談も返すと、「主の体調管理も従者の務めだ」と真面目に返された。
今、時刻は12時過ぎ。アリス達はもう寝ている。
俺は、ちょっと前から月を見ていた。
ギルも横で、一緒に月を眺める。
「ねえ、ギル。」
「何だ?」
「ギルって月みたいだよね。」
ギルは、訳がわからないという顔をする。
「まずは、目。」
「あ、ああ。色か。」
ギルは右手で右目の少し下に触れる。
「あ、でもそれだけじゃないよ。」
うーん、なんて言ったらいいのかよくわからないんだけど。
「月って、暗闇の中でも光ってるじゃん?」
ああ、そうだなとギルは頷く。
「そんな感じ。例え暗闇の中でも、ギルは道を照らしてくれる。アヴィスから帰ってきた時も、一番最初に傍にいてくれたし。」
ね? と問うと、ギルは、そうか? と返した。
「だから、俺にとってギルは月なんだよ。」
ギルを見やると、うつむいていた。理由はわかってる。照れてる顔を見られたくないんだ。
しばらくすると、ギルは問いかけてきた。
「…………月は単体では光っていないって知っているか?」
「ああ。太陽の光を反射してるんでしょ。」
どこかで聞いた覚えがある。
「…………俺にとってのオズは……太陽みたいなものだ。」
こちらに微笑み、そう語るギルの頬はわずかに朱く染まっていて。
ギルはすぐに窓の方へと顔を背けた。
ああ、やっぱりギルは可愛い。
それは、月の綺麗なある晩の事。



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