VOC@LOID

□歌命
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僕達VOC@LOIDは、歌うために在る。



歌命






「カイトー」
「何ー?」
リビングを覗くと、そこにはカイトがアイスを美味しそうに頬張っていた。
…………いいのかそれで。
「マスターが呼んでたよ」
「え?そうなの?レン君ありがとー。」
カイトは、カップに蓋をし去り際にそう言った。
僕は、ただマスターの部屋へ進んでいくカイトの背中を見つめていた。
僕達VOC@LOIDは、歌うために在る。
だから、歌をくれるマスターは神のような存在でもある。
僕らの存在は、マスターによって簡単に消される。
カイトは、今一番危うい存在。
「インストールしてるだけ」にも近い。
「カイト……………」
先程まで、カイトが座っていた椅子に触れる。
そこに、温もりはない。
僕らは、人の姿をしているからといって実際に体があるわけではない。
まやかしに過ぎない。
いつか、聞いたことがある。
<カイトは、歌えなくて悲しいと思わないの?>
そのときのカイトは、少し泣きそうに微笑んで、
<ううん。思わないよ。>
そう答えていた。でも、あれは嘘だ。
<それならなんでそんなに泣きそうな顔をしているの?>
そう聞いたら、無言でこちらを見つめられた。言ってはいけない、のサイン。
カイトは、歌をもらってない。
いつか、きっとアンインストールされるだろう。そのときには。
(僕の存在を犠牲にしてでもカイトを助ける)
そう決意し、「大好きだよ」と呟いた。


→あとがき
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