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□猫症候群
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「ねーえー。ギル?」
「な、何でしょうか、坊ちゃん……?」
それは、いつも通りの昼下がりのこと。



猫症候群




まずい。今の坊ちゃんは非常にまずい。そう僕の勧が告げる。
坊ちゃんは、とても楽しそうな笑みを浮かべこちらを見つめる。
「あのさー。昨日公園にペットが捨てられてたんだよね。」
嫌な予感。かなり嫌な予感。
「ネコ、飼っていいよね?」
「ーーーーーーーー!!」
机の下から、真っ白な子猫が現れた。嫌な予感、的中。
僕は言葉にならない叫びをあげ、坊ちゃんを見やるとにこにこ笑っている。
「あ、そういや俺、オスカー叔父さんに呼ばれてるんだった。」
坊ちゃんは両手をぱちんと軽く叩くと、顎に左手を添え、悩んでいるようなポーズをとった。表情はとても楽しそうである。
「ギル」
「は、はいっ!」
子猫をよけながらも返事。
そして坊ちゃんはにやりと一言。
「“主人”の命令は絶対、なんだよな?」
その言葉に僕は
「はい…………」
と答えるしかなかったのだった。



そんな坊ちゃんの命令は
「…………これはさすがに無理ですよぉ」
坊ちゃんが戻るまでこのネコの面倒をみること。
でも、これはいくらなんでも嫌がらせにしては質が悪いです…
そう呟きため息をついた。
ナーオ。その鳴き声にぴくりと体が震える。
「早く戻ってきてくださいぃぃ………」
涙目でそう言っても無駄。坊ちゃんはここにいないのだから。
隅で猫が近づいてこないように(僕なりの)威嚇。でも全く通じてない。
ニャー?そう鳴きながらこちらへ歩み寄ってくる。その度に僕は寿命が縮むような思いだ。
「……………う、うん。大丈夫。きっと大丈夫。」
僕は自分自身に暗示をかける。あれは猫ではない。猫に似たスレンダーな子犬なんだ。
そう、あれは猫じゃ「ミャーオ?」
「……………………」
自己暗示、失敗。
「……坊ちゃぁん」
早く帰ってきてください……また、そう呟いたのだった。





その後、ずっと廊下からギルの様子を見ていたオズは、精神的にすごく疲れたのか子猫と一緒に(多分子猫の方が近寄ってきたのだろう)寝ているギルを見つけた。
「やっぱギルは何してても、可愛いよなあ。」





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