GX

□Sweet dreams.
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 今夜見るのは、どんな夢?
 甘い甘いお菓子の夢? しょっぱい涙の海で泳ぐ夢? ふわふわ雲の上を歩く夢? 星の川を渡る夢?
 

 月明りだけが真っ暗な部屋を照らしている。人工的な光源が少ないデュエルアカデミアの島は、灯りを消すと途端に闇にのまれてしまう。
 大きなブルー寮のベッドに、十代とヨハンは寝転がっていた。枕は一つしかない。だから十代はヨハンに腕枕をして貰っている。

「今日も楽しかったなぁ」
「そうだな、特にあの時の翔と万丈目ときたら!」

 くすくすとふたりは小さく笑い、同じ時間を共有する。
 んん、とひとつ伸びをして「今日が終わるの勿体ねぇなあ」と十代が言った。

「お昼に食べたドローパンは美味かったし、デュエルも楽しかった。……授業はつまんなかったけどさ」

 口を尖らせる十代の髪を撫でながら、ヨハンは優しい表情をして頷きを返す。それが心地良いのか、十代はどこかうっとりとした表情を浮かべていた。

「さっき見た星もすっげー綺麗だった。やっぱヨハンと見るからなんだろうな」
「俺も、十代と一緒に見た星はいつもの何十倍も綺麗に見えたよ」

 本当は星を眺める十代をこっそりと見ていた、なんて口が裂けても言えないけど。でも、それでも十代の隣で見る景色は一人で見ていた時よりもずっと綺麗だとヨハンは思っていた。
 森も、火山も、海も、空も。なんてことない日常の風景は、十代の隣にいるだけでガラリと変わる。ワクワクする。世界が輝く。
それは十代も同じのようだった。
 

「ヨハンと一緒にいるとあったかくてやさしくて、たのしい」
「うん」

 頭を撫でられて安心したのか、次第にふわふわとした声になってきた。呂律が回っていない。
目は半分以上閉じていて、夢の世界に片足を突っ込んでいるようである。
赤子のように無防備だ。甘える十代なんて、きっと他の誰も知らない。ヨハンだけが見る事の出来る十代の姿。そのことに少し優越感を抱いていた。

「さあ、十代。もう寝よう」
「や、だ……」

 必死に目を開けて頭を右に左に降る。それから駄々っ子のようにヨハンにすり寄って、小さく呟いた。

「寝たらヨハンの顔、みれない」
「なら、夢で逢おう」

 夢の中でも、デュエルしてお菓子を食べて、海で遊んで星を見て、そうやって今日の続きをしよう。きっと楽しい夢に違いない。
覚めた夢の続きは明日紡げばいい。だからずっとずっと楽しいまま。

「ん……。おやすみ、よはん」
「おやすみ、十代」

 瞼にキスを落とすと安心しきった顔で十代は眠りに着いた。
 ヨハンもそれに倣って瞼を閉じる。

 さあ、夢を紡ぎましょう。きみとぼくとで楽しい夢を。あなたとなら、どんな夢でもきっと楽しいから。




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