GX
□Smile for you-another ver.-
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我武者羅にペダルを踏んでいると、あっという間に家についていた。
階段を駆け上がり部屋に籠る。リュックを机の上に置いてボフッとベッドに倒れ込んだ。視界が暗転する。
「覇王が、オレの事を好き……」
なんで友達じゃいけないんだ? なんで今更この関係を変えようとしたんだ? 覇王の事が分からない。
「返事しなきゃだよな……」
覇王は変わることを望んでいる。嘘偽りのない本心を打ち明けてくれた。なら、オレもそれに応えなければならない。先程のような沈黙ではいけない。
「と言っても、断るしかねぇんだけど」
そう、オレ達は男同士だ。恋愛対象に入る訳がない。でも、そんな一般論で済ませてしまって良いのだろうか。それで覇王は納得してくれるのだろうか。
枕を抱き寄せて寝返りを打った。不意にリュックが目に入る。
「そうだ、チョコ」
潰れていないか心配しつつ、そっと取り出しシールを剥がす。ふわりと甘い香りが漂い、朝の駐輪場の平和なワンシーンが頭を過ぎった。
「クッキー?」
一枚取り出してみる。何だか不思議な感じだ。
どうやらチョコチップとコーンフレークが練り込まれているクッキーのようで、咀嚼すると、触感の良いコーンフレークがサクサクと音を立てる。
「甘い」
味がではない。いや、実際甘いのだが、覇王の感情が伝わってくるようでそう感じたのだろう。料理は愛情だと言うし。
「愛情……」
カッと熱が顔に集中する。
このクッキーはオレだけの為に作られたもの。覇王の、オレへの想いの結晶。
「覇王は、こんなにもオレの事想ってくれてるんだな……」
でもオレは、やっぱりそれに応えることは出来ない。男同士だし、オレは覇王に釣り合わない。覇王は幸せな家庭を築くべきだ。覇王の事を分かってくれて、オレよりもふさわしい彼女を探さなきゃいけないんだ。
「なんで」
こんなに胸が痛いんだろう。視界がかすんで、パタリと床を濡らす。
「わっかんねぇ」
そう呟いて、またベットに伏せた。
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バレンタインの十代視点でした。あんまりにも長くなったので、後半戦はホワイトデーに上げますね。
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