GX

□コンクリートジャングル
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 カーテンの隙間から差し込んでくる眩い光に目が覚めた。
 けたたましく鳴り響くはずの目覚まし時計は、役目を終えたかのように静かに佇んでいる。

「……また止めちまったのかよ!」

 10回目覚ましをセットすると、7回は確実に止まっている。どうやら鳴りだして直ぐに勢いよく止めているようだ。その証拠に、頭上に置いてあるはずのそれは横転し、位置が大幅に変わっている。
 ため息を吐きつつ、時計を直すと既に8時20分を回っていた。ん? はちじ、にじゅっぷん……だと!?

「やっべぇええ! 遅刻だぁぁ!」

 朝から絶叫する声が辺りに木霊した。
 慌てて制服に袖を通す。朝ごはんは、食べる時間が無い。毎回遅刻すれすれだから、朝ごはんはいつも菓子パン。それを潰れないようにをリュックに詰めて始業前に学校で食べている。牛乳だけ胃に流し込み、戸締りをして、愛用の真っ赤な自転車に跨った。



 7月にもなると、朝といえども日差しがキツイ。じりじりと日光に焼かれながら、自転車を漕ぐ。通学路には上り坂が多い。行きはよいよい帰りは恐い、の真逆だ。
 いくら体力に自信があっても緩やかな坂が延々と続くのは流石にばてる。しかも時間との勝負だ。信号で止まる度に携帯を取り出して時間を確認する。最期に見たときは、確か40分だった。

「ショート始まってるし。もういっか」

 1時間目の開始時刻である9時までに着けばいい。ここからなら余裕で間に合うだろう。
 はぁ、と大きく息を吐き、ペースを落とす。
 人気のない、平坦な道。朝の喧騒とはかけ離れた裏路地は、この遅刻常習犯であるオレが連続遅刻を阻止するために発見したものだった。もっとも、今回は役に立たなかったが。
 止まって、スポーツドリンクを口にしようとした時。頭に何かが刺さった。

「〜〜〜っ!!!」

 声にならない悲鳴。目の奥には火花が散っている。

「な、何だなんだ!!?」

 上空を見渡してもあるのはのんきに浮かぶ雲だけ。まさか、と思い視線を下げると何かがそこにいた。
 自転車を降りて、それをしげしげと眺める。

「何だ、これ?」

 大きさは15センチくらい。人型をしている。その小ささには似合わない大仰な鎧を身にまとっていた。なるほど、オレの頭に刺さったのはこの刺々しい鎧か畜生。
 取りあえず起こしてやろうと思い、俯せになっていたのを仰向けにすると、兜に覆われた顔が現れた。

「おーい、大丈夫かー?」

 反応は無い。どうやら気絶しているみたいだ。

「どーすっかなぁ」

 頭をガシガシと掻き、唸る。
 炎天下のなかで放置しておくのは、流石に躊躇われた。

「しょうがないなぁ」

 どうやら今日は自主休講決定のようだ。






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