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□風邪引き注意報!
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珍しく十代が風邪を引いた。


ベッドの上で大人しく寝ている彼は普段の元気はどこへやら顔を真っ赤にして荒い呼吸を繰り返している。

静かな部屋には十代の呼吸の音だけが響いていた。俺はそれをベッドの横に座って見ている。本当に苦しそうだった。出来ることなら代わってやりたい。


「ん……、ょはん…?」


目を覚ました十代がか細い声で俺の名前を呼んだ。

ぼぅっとした顔で見上げてくる。目はトロンとしていてだるそうだ。



「ど、して…こ……こに?」


そう言いながら無理して体を起こそうとする十代を制す。


「あー、十代が心配だったから」

「そ…れだけ、で学校休んだのか…?」

「先生公認だから心配すんな!」


そう、朝のショートで十代がいないことに不信を持ったクロノス先生が様子を見てこいと俺に頼んできたのだ。万が一体調不良ならクロノス先生に電話をし、そのまま俺は休みになる。先生に心配されるなんてよっぽどだぜ十代。


「な…んでだ?」

「『あのシニョール十代が休んでるなんーて、珍しいノーネ。普段元気な人ぉが風邪とか引いてると辛いだろうかーら、シニョールヨハン様子を見てくるノーネ!』ってさ」


人差し指を立ててクロノス先生の真似をしながら言う。くすくすと笑い声が聞こえてきた。


「なんだよ、なんで笑うんだよ?」

「わりぃ、あんまりにも似てたから…」


そっか先生も心配してんのか、とボソリと呟いた。


「当たり前だ、元気の塊みたいな奴が朝っぱらからいないんだぜ?それにお前のことだから厄介ごとに巻き込まれてるんじゃないかってみんな心配してた」


「ごめんな」と謝りしゅんと目尻を下げる。まるで雨のなかに捨てられた仔犬のようだ。


「あやまるくらいなら早く風邪治せ。飯は食べたのかよ?」

「いや…」

「じゃ、待ってろ。キッチンかりて粥作ってきてやるから」


それだけ言って十代の側から離れようとした瞬間、服をクン、と引っ張られた。振り返ると十代が少し潤んだ目で俺の事を見ていた。


「……十代?」

「ぃか、ないでくれ」


どうしたのだろうか。いつもの十代らしからぬ行動に驚きを隠せない。普段の俺なら喜んで一緒にいてやる所だが、先程より呼吸が荒くなっている十代を見てその気持ちを抑えた。


「大丈夫だ、飯作ってきたらすぐ戻ってくるぜ。それからはずっと一緒にいる。だから、な?」


渋々頷いた十代がゆっくりと指の力を抜き服を離した。今にも泣きそうな顔だった。


「じゃあ、大人しく寝とけよ!」


そう言いながら後ろ髪を引かれる思いで部屋を出た。今すぐ十代を抱き締めてやりたい。だけどあのまま風邪を放っておくわけにもいかないんだ。


そうだ、先にトメさんの所でクスリ貰ってこよう。あと、風邪によく効く食べ物を聞いて……。


それにしても、さっきの十代可愛かったな。普段はあんなに甘えてこないもんな。なかなか見られない顔もほんの少しの間で沢山見られたし。



不謹慎だけどたまには風邪も悪くない、そう思った。







→あとがき
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