記憶の彼方戦記

□始まりのはじまり
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「あれは複雑だ。考慮すべき事は一つや二つではない。……まあ、私見になるが、孤立してまでやる事ではないと思うがな」

代償に見合う利益がない。
加賀もその結論に達していたようであった。
まだ主流の考えではないが、かといって個人単位の意見でもない。

「……まあ、結局オレ達が話しても状況は変わらないし、考えるのやめて見守るしかないのかな」

「馬鹿、見守るんじゃなくてお前も訓練に励め。それから考えるのはやめるな」

あはは、と笑う赤城に加賀はため息をつきながら注意する。

赤城は再び寝転がり、空を見た。
曇り空は晴れる様子を一向にみせない。

正直に言ってしまえば、満州を含め、大半の問題は人間達に任せるより仕方ないのである。

何を考え思っていようが、方針は自分達が決められる事ではない。人間達が全て決めるのだ。自分達はその点においては単なる兵器でしかなかった。

しかし考える事をやめたら自分のいる意味は完全に消え去ってしまうだろうという不安がある。彼等独自で出来ることは限られていることがそれに拍車をかける。。
それに、例え人間にしかどうにもできない事を除いたとしても考える種は尽きる事はないのである。

例えば哲学的な事であれば自分達の存在や、“正体”についてもそうだ。はっきりとわかってはいない。
きっとそれは人間が人間である事を証明するのと同じような事で、証明する事は不可能なのだろうが。

「よし、じゃ、訓練でもしよっか。行こう、加賀」

ぴょん、と跳ね起きて加賀に笑いかける。

「全く、寝転がったり跳ね起きたり、忙しい奴だな」

加賀は苦笑いしながら答えた。
灰色の空は、不吉に雲を漂わせていた。
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