彼方戦記U
□太陽の下の道。
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夜と朝の境目が近づいてきた。
もうすぐ、水平線から太陽が昇ってくる時刻。
「一日の始まり」をいつからと考えるかは多数の意見がありそうだが、朝もひとつの始まりだろう。
明るくなりはじめた空を見ながら、榛名はぼんやりそんな事を考えていた。
そのままなんとなく、何処へ向かうでもなく歩き出す。
理由などはなく、ただふとふらふらしてみたくなっただけであるが、たまにはそういう事もいいだろう。
全く休みが無いほど切羽詰まった状況でもない。
つまり、縛り付けられている必要はないのだ。
……というより、今は真面目にやっている方が一握りである。
他は「自由」に喜んで気が緩んでいる。
状況は落ち着いてきたし、そろそろ大将も動き始めるだろう。
そうしたらあいつらはどんな行動をとるのだろうか。
考えると、何故だかついつい笑ってしまう。理由は自分にもよくわからない。
だが、楽しいのだ。
それに、意味も無く笑えるならそれだけ平和ということである。
平和だからこそ、こうしてのんびりと散歩をする事も出来る。
東の空を見た。
夜と朝の境目の青い時間。
今日の夜明けが格別に美しいわけでも幻想的というわけでもないが、一瞬だけ夢の中にいるような錯覚を覚えた。
何も無い空間。一色の世界。
驚きに目を見開くと、突然、世界に光が溢れた。不意の眩しさに思わず目を細める。
朝でも夜でもない間の時間はひどく短い。
いつのまにか太陽が水平線の向こうにその姿を現している。
溢れた光は旭だったのかと理解した。
「……そろそろ帰るか」
太陽を右手側にして歩きだす。
何となく、いい一日になるような予感がした。