記憶の彼方戦記

□始まりのはじまり
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柳条湖事件が起こってから早数年が経過していた。満州で暴走する関東軍の話を思い返して、赤城はため息をつく。
そういえば、前も同じ事を考えていた気がする。

あれは暴走して止まらなくなってしまったような雰囲気さえ感じた。これだから陸軍(正確には関東軍だが)は。いや、海軍が満州事変で全く何も関わっていないということは無いのだが。

自分は参加していないが上海事変の時には何人か派遣されている。自分が何も出来なかった事はそれなりに悔しいし、置いていかれた気もしなくもない。が。

「……世界を敵に回してまで守るものかな…」

地政学的問題、農耕の数値、政治的価値。その他の様々な事も含めて思考すべきことは多い。それらが複雑に絡まっていたが、考えつくした結果として赤城にはそこまでこだわる必要性が感じられなかった。
そんなことは言ってもそれは赤城の意見でしかないし、彼自身はそれなりに高い地位にいたが決定を行うのは人間達だ。そして、彼の意見は全体から見れば一部に過ぎない、逝ってしまえば少数派の意見である。


とりあえず腹いせに、自作自演にも程があるとでも陸軍の誰かに言ってやろうか。

暴走の末、今度は傀儡国家「満州」をでっち上げるという無茶をやらかしているのである。
やめておけばと思ったのだが、どうも国民は関東軍を後押しするようなノリらしい。
政府は不拡大方針だったはずだが……マスコミが上手い具合に煽ったのだろう。この国の民は、非常に流されやすいのだ。

暴走しているのは関東軍だけではない。このままいくと、本当にまずい。
もしアルメスと戦えなんて言われても、あんな化け物相手にまともに戦えるわけがないだろう。
戦力は相手の約六割程度。短期間ならともかく長期となれば絶望的である。

「……」

飛行甲板に寝転がって空を見上げると空はどんよりと曇っていた。

どうも気分がよくない。
どんよりとした空模様は、日桜の行方を暗示し、赤城たちの心情を映し出したかのように思えた。

杞憂だといい。もしくは、夢ならいいと心から思うが、不安や嫌な予感ほど、的中することが多い。
普段はたいして予感は当たらないのだから、こういうときこそ外れてほしい。

まだ今なら、何とかなるとは思うのだが……。
何かあるより無い方がいいだろう。
特に、華月の問題は複雑だ。ちょっとした事で戦争になる可能性だってあるのだ。 


 
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