番外編

□桜の国の誕生日の話
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苦笑混じりの笑いと共に降りてきた助け舟。

「む。明、宵。ぬしらはそう感じるのか」

日桜神の視線の先にいるのは、漆黒の烏と白銀の狼。
あからさまに不機嫌になる日桜の様子に、烏はくすくすと笑う。

「ああ、感じるさ。神代の時から生きる我等と、ついこの間生まれたようなひよっこを、同列に並べて話しているからねぃ」

烏の言葉に狼も静かに頷く。
日桜は流石に無茶苦茶に気付いたのか、赤くなりひたすら二人を抱きしめている。二人からすればいい加減苦しいくらいだが、振り払うわけにもいかない。

「それと、二人を離してやれ。陸軍も海軍も苦しそうだ。守る者を我等が苦しめてはいかぬ」

指摘したのは、狼。
うるさいの、宵。桜は不服そうに呟き、抱き締める力を弱める。

「ではうぬらはどう思うかの、我は海軍も陸軍も好きじゃ。仲良くしてほしいのじゃ!」
「ならば日桜、手本を見せてはどうだ? 名居神と、思うように仲良くしてくればいい」

ちらと明桜と目をあわせた宵桜が、少し楽しげに提案する。ぴくりと日桜が反応した。

「言ってわからないならば、手本を見せてやらないとねぃ。ほれ、長門。三羽烏の一羽の言葉、日桜は知らぬようだから教えてやるといいさね」
「知っておる! うぬ、うぬら、我をいじめて楽しいかの!!」

馬鹿にされていると真っ赤になり、涙目になりながら日桜が叫ぶ。
子供と然程変わらない反応に、慣れているとはいえ苦笑してしまう。こんな様子だから、偉大な神であると言われたって信じるのは難しい。

「落ち着いてください、日桜様」
「うわぁああん」
「準備ができません」

ついには泣き出した日桜と、二重の意味で焦りだす長門と関東軍。
雪はやんでいるとはいえ、処理はすんだとは言い切れない。もう数刻もすれば祭の準備に一斉に皆がやってくる。そうなる前に状態を完璧にしたい。
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