TOA

□世界を届ける
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1.ルーク

時間が許してくれるのならば、ガイの言う世界を見てみたい。
一緒に旅をして、同じ景色を眺めて、その土地の名物を食べてみたりして。
もっと、もっと、たくさんの共通の話題がほしい。
たくさんの繋がりがほしい。

全然足りない。

だけど今は、その声に耳を澄ませる。
同じものを見れないのなら、せめてガイの感じた気持ちを知りたい。

そして、同じものを同じ気持ちで感じたように錯覚させて下さい。



2.ガイ

いつも、俺の話を大人しく聞くルークに胸騒ぎが治まらない。
昔はもっとワガママを言っていたのに。
そのたびに俺は
『いつか一緒に世界を回ろう。』
『屋敷から、連れ出してやるよ。』
…なんて、遠い未来の約束をした。

それは、漠然とした…途方も無い嘘だ。
俺は約束を守るつもりなんてなかった。
ルークは素直に約束を信じていたのに、その想いは俺に届かなかった。


そして、今になって立場が逆転している。
俺は本気でルークを浚って二人で一緒に旅をしたいと乞う。
そしてルークが『いつか一緒に行こう』と漠然とした嘘を吐く。
俺の願いは、ルークに届くことは無い。

自分の目で見て、耳で聞いて、その空気吸って、舌で味わって、触れて欲しい。
もっと、欲張ってほしいと願うのに、ルークは健気に俺の話を聞いて、嘘を吐く。


俺の見た世界は、そんな嘘を吐くことしか許してくれない。
だったら、俺の見た世界も全て、消えてしまえばいいと思わずにはいられない。

こんなにも、世界全てを呪っているのに。
それを、俺は綺麗なものに変換してからルークに与える。
感じた憎しみの全てを、修正機で塗り潰して
『この綺麗な世界に留まってくれたらいいのに』と祈る。

そして俺は、何も知らないルークの
目になり、耳になり、舌になり、五感全てを捧げる。

君の全ての感情を支配する。



世界を届ける

***
この五感は全ては、彼の為に存在する。



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