TOA

□都合のいい解釈
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「うぜー!ガイのあほ!!」

ルークはそう叫んでそっぽを向き、宿への道をスタスタと進む。
その後ろをペット(?)のミュウが慌てて追いかけるのをパーティーメンバーは呆然と見送った。
そして、『ヤレヤレ』と苦笑いをしているガイに冷たい視線を向ける。

「今のはガイが悪いですね。」

「つーかさ、可愛いって言われて、ルークが嬉しいわけないでしょ?」

ジェイドがニコニコと嫌味たっぷりに笑い、アニスが呆れたようにため息を吐く。

「は?なに言ってるんだ二人とも。」

「なに、自覚なし?」

二人の言葉に、不思議そうな表情を返したガイを見て『乙女心がわかってな〜い』とアニスが追撃を加えた。
そもそもルーク相手に乙女心とか言っちゃう時点で間違っているが、そこはスルーしてもらいたい。

「今のは怒ってたんじゃなくて、照れてただけだろ?」

ガイは、悪意のない笑顔で爽やかに言い切る。
それを聞いたメンバーの胸中を察してほしい。
(いやいや、今のは絶対怒ってたって!!)
(恋は盲目ってやつですか?)
(どんだけ自分に都合のいい解釈してるんデスカ!?)

「やっぱりルークは可愛いな…」

(まだ可愛いとか言うか!!!)

思わず沈黙したメンバーの視線も気にならないようで、ガイは嬉しそうに呟いた。
そんな姿を見てしまうと、世話係にしかわからないような…。
それこそ、愛故にわかるニュアンスの違いがあるのかもしれない。
…なんて、考えを改めそうになる。

「…………ねぇ、ナタリア。今のは絶対、怒ってたわよね?」

ティアがぽつりと、もうひとりの幼なじみであるナタリアに尋ねる。
懸命な判断だったが、聞いた相手が悪かった。

「あら、気になるのでしたら…直接、本人に聞いてみればよろしいのでは?」

いや、本人に聞くって、それはない。
さすが素直なオヒメサマは発想が違う。
(……もうどうでもいいや。)
ティアとアニスがそう思ったときには、もう遅い。
ナタリアが、持ち前の行動力を発揮して、天然ならではの案を実行にうつしていた。

「ルーク、お待ちになって!
あなた、ガイに可愛いと言われて照れていましたの?」

「な………っ!」

直球過ぎる質問に、ルークだけじゃなく(ガイを除く)パーティーメンバー全員が驚愕した。
落ち着きを取り戻しかけていたルークの顔が見る見るうちに赤く染まっていく。
これは、やっぱり、怒らせてしまったかもしれない。

「だ、誰が照れるか!俺は怒ってるんだ!!
男が可愛いなんて言われて嬉しいわけないだろ!?」

ほぼ予想通りの返事をしたルークに、落胆しながら、落ち込んで戻ってくるナタリアを慰めるための陣形を整える。
戦闘を重ねることで培ってきた、チームプレイがこんなとこで役に立つとは。
人生とは何が起こるか、本当にわからないものである。

「…怒ってる、らしいですわ。」

報告しに来なくても充分聞こえる叫びだったのは、このさい置いておく。
とりあえず、ナタリアにお礼を言って、その勇気を称えてあげたい。

(いやぁ、それにしても……)

耳まで真っ赤にして、あんな風に否定されてしまうなんて。
ナタリアの報告に反して、やっぱり怒ってるんじゃなくて、照れてるだけなんじゃない?
…という疑念が強くなる。

「すぐムキになるところも、可愛いよなぁ…」

(だからまだ可愛いと言うか!!!)

微笑ましそうにルークを見守る親バカの言葉に、一層憐れみを含んだ眼差しを向けてやっても本人は気付くことは無い。
そのアホ面とルークを見比べて、やっぱりガイの思惑通りに解釈するのが癪に触り、前言撤回することにした。

あれは怒りの叫びだったに違いない。



都合のいい解釈

***
あなたはどっち?



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