After the ***

□せ
1ページ/1ページ


布団の中で、すんすんと鼻を鳴らして泣きながら
セリアーは、金縛りが来るのを待っていた。
もともと、そういう厄介な体質なのか
はたまた、あわゆくば、ただの気のせいであればいい。
毎夜のように、セリアーは
金縛りにあいませんように、と願いながら、床につく。

寝るときの姿勢は仰向けにならないよう注意したり
足の爪先まで、くまなくすっぽりと包まれてみたりした。
熱い夏ですら、分厚く大きなかけ布団にくるまり
今日はなにもありませんように、と願う。
それは金縛りに合うたびに垣間見る死への恐怖に立ち向かうため
自分の経験を基にして、セリアーが必死に覚えさせたことだった。

しかし今日のセリアーは、いつもと違う。

悲しくて、辛くて、たまらなかった。
死んでしまいたかった。
だけれども、死にたいとは思いたくなかった。
死にたくなかった。
そういう様々な矛盾した感情がごちゃまぜになって
頭がどうにかなってしまいそうだった。

だから、いつも死にたくない、殺されたくないと
自分の生きたいという意志を
ある種、最大限に引き出してくれる金縛りにかけたのだ。
金縛りになることで、死にたくないと思いたかった。

お願いだから、死にたくないと思わせて。
いつものように、殺しに来ればいいじゃないか、と
不確かな、それでも確かに存在した金縛りに縋る。

死ぬ気で眠ろうとするセリアーが永眠するのは
また、別の話し。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ