After the ***

□う
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この夢から醒める方法を知っている。

ウォーカーは夢の世界の理をわかっていないことが多い。
自分の空想の産物であるはずの夢は、酷く不可解で、理不尽な価値観で存在している。
所詮は夢の話なのだから、深く気にすることもない。
どうせ、わけのわからない魔法みたいな原動力で出来た世界だ。

開き直って、潔く諦められるのは、その夢から醒める方法を、知っているから。
いつだって戦線離脱できる。
わけのわからない、都合の悪い世界に付き合う義理はない。
少し怖いのを我慢して、死ねばいい。
幸い夢の話なので、痛みはない。

そこまで考えて、ウォーカーは足元の線路を見つめる。
ここは夢ではない。現実だ。
だけど、どんな原理で電車は走っているのか。
電気は光るのか、テレビが映るのか、飛行機が空を飛ぶのか。
ウォーカーは知らない。知りたいとも思わない。
夢と同じく、魔法みたいな科学が働いているのだ。
なにも、わけのわからない世界は夢だけに限られたことじゃない。

そう思うと、この現実も夢の世界と大差ない。
ウォーカーは、この悪夢のような現実から醒める術を、知っている。

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