Side:B
□間章
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―――カラン。
『Café(喫茶)・Chat Noir(黒猫)』入り口のドア上部に設置されているドアベルが鳴る。その音を聞き、アランは二人用のテーブル席の天板を拭く手を止める。
もう夜も遅いというのに一体誰が?といつものアランなら思っていただろう。だが、今回は違っていた。誰が来るのかを知っていたからだ。
「いらっしゃい。―――エリオット」
店の入り口に立っているエリオットに向かって優しく微笑む。
「電話で言った通り、こっち来た」
その表情にいつもの様子は無く、憔悴しているようにも見える。
今の彼は悲壮な決意を固めているのだと、アランは分かった。多くを聞く事はしない。今彼にする事は、自分にしか出来ない事だと分かっているからだ。
「―――僕の部屋……この奥だから、入って」
アランが店の奥へと歩みを進める。今からする事は店では出来ない。人目に触れないとも限らないからだ。
「……ああ」
エリオットは大人しく、アランについて行った。