犬夜叉

□○雪
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「寒い……。」





井戸が向こうに通じなくなってから、もう2年の月日が流れた。






かごめはマフラーを鼻まで覆い、家までの足取りを早めた。








「……ほんっとに、寒い………。」







かごめは立ち止まり、俯いた。

「……っ…。」

目頭があつくなり、慌てて上を向いた。





「……っ……やしゃっ…。」



寒いからだろうか?

心まで寂しくなってきて涙が止まらなかった。








「……会いたい…………会いたいよっ………犬夜叉……。」





次から流れる涙は、頬を伝いマフラーを湿らせた。






かごめは涙を止めようと、目を瞑り、深く深呼吸をした。






「……っ…冷たっ…。」






何か冷たい感覚を頬に覚え、かごめは目を開けた。








「雪だっ……。」





空から雪が舞い降りてきた。







「向こうも雪、降ってるかな…?」





もう一度目を閉じると、井戸の前に座っている犬夜叉が頭に浮かんだ。

周りは雪に覆われ、犬夜叉の座っている下にだけ葉が見える。


いくら半妖とはいえ、少しは寒さを感じるはずなのに、ずっと井戸を見つめている。







犬夜叉ーーー。




かごめは後ろから温めてあげようとして、手を広げた。



しかし、包もうとしたその腕は、虚しく空を描いただけだった。







犬夜叉ーーーーー。






止まったはずの涙が、また溢れだしてくる。







「……っ……。」








かごめは顔を手で覆った。








犬夜叉ーーーーーーーー。









かごめの心を表すかのように、雪が静かに舞い続けていた。





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