狼と猫

さよなら
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「はやとさん、行ってらっしゃい」


「‥おう」


「やだもう!これって新婚さんの会話じゃないですか!」
嬉しそうに顔を緩めて照れ隠しに俺の背中をばんばん叩きやがるこいつ。
─────三浦ハル。


「痛ぇだろうが、おい!」

「はひっ!」
なんですかそれ!可愛げのない男ですほんとに。


「‥行ってくる」
そんなハルの気持ちを見透かしたのか、はやとさんは少し不機嫌そうな顔つきでこっちを見て。


「行ってらっしゃい、はやとさん」

その表情に気付かないふりをして、にこりと笑って。
彼を送り出すのです。


「ああ」



愛想の欠片もない返事をしたあと、スーツの内側に銃をしまって出掛けたはやとさん。
そのいつもの動作にハルは何故か少し違和感を覚えます。

名残惜しい、と。



これからずっと一緒に過ごすのに。



なのに、名残惜しいなんて。



今日のハルはどうしてしまったんでしょうか。





「明日は結婚式なんですから、はやく帰ってきてください、はやとさん。」



もうすでに玄関を後にしてしまった姿のない彼に、そっと呟きました。
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