クラッシャーズ

□その女が何者かわかってるのか?
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警察病院行きのバスに乗る為にバス停で待っていた歩美ちゃん、光彦君、元太君にこんにちはと声を掛ける。

「こんにちはすみれお姉さん!」
「すみれさんはどちらへ行かれるんですか?」
「みんなと同じ場所よ。」
「もしかしてあの姉ちゃんのお見舞いか?」
「そうよ。私も心配してたの。一緒に行ってもいいかな?」
「もちろんです!」
「一緒に行こう!」

警察病院前のバス停に着き、病院まで歩いていると横を白のRX-7が通り過ぎる。一瞬れー君と目が合った気がした。近くにマスタングが停まってたのは確認できたし、れー君の事は秀一君に任せよう。

光彦君と受付に向かいおねーさんと会えるか聞くが案の定無理だった。

「ダメですね。誰も会えないみたいです。」
「マジかよ!」
「そんなに具合悪いのかなぁ。」
「これは確かめてみる必要がありますね。」
「え?どうやって?」
「これです!」
「あ!」
「そっかぁ!」
「そう。ボク達の強い味方です!」

頼られてると言えば聞こえはいいが、要はこき使われてるって事だよね。それでも嫌な顔しないんだからほんとタカさんってお人好し。それが長所でもあるけど、短所でもあるのよねぇ。そんなタカさんだから佐藤さんとはいい組み合わせだと思うけど。バランスが取れてて。

タカさんの計らいで病棟のある階に上がり、オセロをしながら待つ。病室の方から戻ってきたタカさんをいち早く見つけた元太君が立ち上がる。

「高木刑事!」
「ホントだ。やっと戻ってきた〜。」
「姉ちゃんは!?」
「会えそうですか!?」
「静かに!君達は内緒で入ってきてるんだから。」
「誰に内緒だって?」
「あ、すみません。つい、いつもの流れで…。」
「タカさんほんとごめんねぇ。でもどうしてもおねーさんに会いたくて。」

おねーさんと再会し喜ぶ子供達。次の取り調べが始まるまでの時間を貰い、再びオセロを始めた。

元太君がそうだと思い出し、ポケットからイルカのキーホルダーを取り出す。その時ブーブーとスマホのバイブ音がし、電話に出る為ちょっとごめんねと私はその場から離れる。

「もしもし?」
《解析が終わった。内容に変更はなしだ。》
「わかった。ありがと。」
《今からそっち行くから入口で待っとけよ。》
「りょーかい。」

電話を切り元の場所に戻ってくると、さっきのほのぼのとした空気とは打って変わって何やら不穏な空気が流れていた。

「その女性は警察庁に侵入した被疑者だ。その目的を聴取しなければならないんですよ。わかって頂けたならすぐに身柄引き渡しの手続きを始めてもらいたい。あなた達にそれを拒否する権限はないのだから。」

高圧的な態度を取る裕ちゃんにはぁと溜め息を吐き、私はつかつかとその間に割って入る。

「ちょっとちょっと。もうちょいその態度どうにかなんない訳?」
「げっ…。」
「おい、げっとはなんだげっとは。そんな事言うお行儀の悪いお口はどれですかこれですか。」

裕ちゃんの頬を摘みぐいぐい引っ張る。その様子にタカさん達や裕ちゃんのお仲間さんがぽかんとする。

「ちょ、やめ…やめろ!お前本気でやったな?!かなり痛かったぞ!?」
「これでも手加減しましたけど?」
「どこがだ!ってか、なんですみれがここにいるんだ?!」
「そこのおねーさんのお見舞いによ。友達だもの。」
「その女が何者かわかってるのか?その女は、」
「知ってるわよ。」

裕ちゃんにだけ聞こえるように言うと裕ちゃんはなぜと目を見開く。ちょっと耳貸してと、私は裕ちゃんの首に腕を回し顔を近づけ耳に口を寄せる。

「ノックはキール、バーボン、スタウト、アクアビット、リースリング、スコッチは生きている。」
「!!」
「観覧車で発作を起こした時、あのおねーさんが言った事よ。そして病院前でれー君の車とすれ違った。助手席には金髪美女が乗ってたけど、心当たりあるでしょ?」
「金髪…ベルモットか!じゃあ降谷さんは…!」
「近くに秀一君の車があったから、れー君は大丈夫だと思う。」
「赤井か…。癪だが降谷さんの命には代えられない。」
「(似た者同士か。)…ねぇ、景光君どうしてる?電話繋がらなくて。」
「諸伏は我々とはあくまで別行動だから何とも言えんな。こっちで連絡が取れたらすみれに連絡するよう掛け合っておく。」
「…そっか、ありがと。」

そこでようやく体を離し後ろに下がる。お仲間さんにあれは誰だと問われる裕ちゃんは、疲れたように後で説明すると溜め息混じりに言った。いちいち失礼な奴だなもう!

「ごほん…ではこちらへ。申請書は用意してあります。」

目暮警部と共に去っていく裕ちゃんにあぁそれとと声を掛ける。

「裕ちゃんもうちょい笑えよ。怖いのよ。だから彼女できないんだぞー。」
「うるさい。余計なお世話だ。」

裕ちゃん達の姿が見えなくなった後、タカさんがそろっと私に聞く。

「えっと、すみれさん?あの公安の人とはどんな関係で?」
「遠い親戚よ。あんなんだけど、優しいとこあんのよ?ただ仕事に熱くて真面目なだけだから、さっきの態度は許してあげて。」

面会はこれで終わりだと連れて行かれるおねーさんに、子供達はえ〜っ!と不満げに声を上げる。

「ありがとう、みんな。これ、大切にするから…またいつかみんなで観覧車に乗ろうね。」
「うん。」
「絶対ですよ。」
「乗ろーなっ!」
「おねーさんの世界の色は無限大って事、忘れちゃダメだからね。」
「え?えぇ…。」

今はわからなくても、記憶を取り戻せばこの意味がわかるよ。

園子ちゃんの力を借りてこれから観覧車に乗るという子供達に一緒に行かないかと誘われたが、これから大事な仕事があるからと断る。子供達を見送りげす君の迎えが来ると私達は東都水族館近くのとあるアパートへと向かう。

「アリス仕事だぞおおおおお!!」
「わーってるよ一昨日聞いた。だからその大声やめろ。」
「じゃあ手筈通りキュラソーの回収よろしく!」
「それはいいが…そのアリスってのやめね?似合わなすぎも程があるぞ。すみれの方がアリスっぽいだろ。そもそもなんで俺がアリスなんだよ。」
「アイリッシュ、アイリッス、アイリス、アリス。」
「…あそ。」

そう、アリスとはアイリッシュの事。ちゃっかり引き入れてたのだ。アイリッシュとはこっちの身分を明かした上で賭けをした。アイリッシュが任務を終え組織に帰れば私達の負け。アイリッシュが裏切られたら私達の勝ち。その時はこちら側につきジンに嫌がらせ(笑)しようぜと。
結果は明白だ。知っているのだから。装備なしではアイリッシュが死んでしまうので、潤った壊し屋資金で防弾ジャケットを買い血糊を仕込んでそれを渡した。新一君守ってあげてねと付け足して。
消えたアイリッシュにコナン君は不思議に思ってるだろうが、まぁそこは仕方がない。その内キュラソーと伺わせますので。

ピスコの事がありアイリッシュはジンを恨んでいる。裏切られた以上もう組織に思い入れはない為潔く負けを認め、日々ジンに嫌がらせする為のネタを考えている。どうだ暇だろ。
ちなみに私は、全ページジンのヘアスタイルブックを制作しようかと思案中。試しにキャバ嬢みたいな盛り髪のジンのコラ画像作ったらアリスの爆笑を頂いた。今度はマリーアントワネットみたいな盛り髪にしようか。

その時ピンポーンとチャイムが鳴り客が来た事を知らせる。げす君が出迎えに行きその客を連れてくる。

「君がアリスか。よろしくね。」
「だから…はぁ、もういいよアリスで。」

来たのはなるみんだ。回収したキュラソーはここに運ぶので、その手当てをお願いしたのだ。重症患者が来る予定だからと早めに来てもらい準備をしてもらうのだ。

「それにしても…訳ありで病院には連れて行けず、しかもこれから怪我をする予定の人間とはね。雅弥君って本当不思議だね。詳しい事は聞かないけど、今度焼肉でも奢ってよ?」
「おぅよ!それくらいいくらでも奢ってやんよ!」
「なるみん、ありがとね。」
「いいよ。雅弥君には恩があるしね。」

そして私達もサトリとルサールカの姿になり準備を整える。

「これが壊し屋最後の仕事だぜ相棒。」
「うん。」

いざ行かんと1歩を踏み出した時、スマホに着信が入り出鼻をくじかれる。誰だと見ると景光君だった為慌てて出る。

「景光君?!大丈夫!?無事!!?」
《あぁ大丈夫だ。悪ぃな。忙しくて連絡ができなかった。零からさっき連絡が来て無事を確認できたから安心してくれ。》
「そっか…よかった。」
《零から聞いて驚いた。あの女と友達とはな。…なぁ、今どこにいる?》
「今?…家にいるよ。」
《…そうか。今夜はもう外に出るなよ。》
「うん。」
《それから…すみれ、風見とどんな関係なんだ?》
「え?裕ちゃんから聞いてない?ただの親戚だけど。」
《親戚?そう、か…ならいい。じゃあ切るぞ。》
「…景光君、気を付けてね。いってらっしゃい。」
《ありがとう。いってくる。》

電話を切りふぅと大きく息を吐く。れー君は無事助かったし景光君の無事も確認できた。不安要素が減りより集中できるようになったかも。

今度こそ私達は東都水族館へと向かった。観覧車は無理でも水族館は守りたい。だってあそこは、リニューアル前だけど景光君と初めてデートに行った場所だから。組織が壊滅して景光君が元の生活に戻ったら、最初のデートは東都水族館に行きたいなぁ…。



「風見か?俺だ。」
《降谷さん!ご無事で!すみれからベルモットといたと聞いて気が気じゃありませんでしたよ!》
「すみれ?確かに病院にいたが…風見知り合いか?」
《すみれは遠い親戚です。記憶喪失後のキュラソーと友達になったとかで見舞いに来てたんですよ。》
「な?!すみれの奴…まさか首突っ込む気じゃないだろうな…。キュラソーは?」
《指示通りに確保しました。》
「よし。なら観覧車に乗せるんだ。」
《え!?観覧車に乗れというんですか!?》
「あぁ…定かではないが、今はこの方法に掛けるしかない。やってくれるな?」
《えぇ。それより早く合流しましょう。》
「いや、組織の目がどこで光っているかわからない。観覧車までこのままでいく。じゃあな。」
《待って下さい!降谷さん、諸伏と連絡取れますか?キュラソーが発作を起こした時、スコッチは生きていると言ったそうです。すみれが連絡が取れないと心配していたので…。》
「何?!奴らはスコッチの事は何も言ってなかったから大丈夫だとは思うが…わかった。俺から連絡しておく。」
《お願いします。》



「景光、俺だ。」
《ゼロ!お前無事なんだろうな?!》
「それはこっちのセリフでもある。キュラソーはスコッチが生きているという情報も掴んでいたようだからな。」
《!!そうか…今の所誰かにつけられたりとかはしてないから安心してくれ。》
「それから、すみれに連絡してやれ。お前の事心配してたぞ。どうやら記憶喪失後のキュラソーと知り合って、観覧車で発作が起きた時一緒にいたようだ。さっき病院にお見舞いに来てたと風見が言っていた。」
《な!?…もしキュラソーが記憶を取り戻して組織に戻ったら、可能性は低いがすみれが巻き込まれる危険性が出てきたって事か。》
「あぁ。…俺は今から東都水族館に行く。キュラソーを観覧車に乗せるよう手配しておいた。」
《わかった。俺も準備を整えてそっちへ向かう。…なんとしてでもこの件を片付けるぞ。》
「もちろんだ。」
《(というか、すみれと風見さんの関係はなんなんだ?それも聞かなきゃな。)》

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