短編

□ペンギンとメッセージボトル
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街外れにある小さな港
そこには1人の少女が静かにたたずんでいた
少女の手にはガラスの小瓶
そして少女はその小瓶を海へと投げ入れた



『もしも生まれ変われるならば
 ー            ー』



流れていくガラスの小瓶はやがて水平線の彼方に消えていった



―――――――――



ペンギンにそれを聞いたのは彼が海賊としてこの街を出る直前のこと



『この海に昔からある言い伝え?』

「ロー...船長から聞いたんだが
 なんでも、羊皮紙に願いを書いてそれを小瓶に入れて海に流すといつかその想いが実るって話だ」

『へぇ〜』



その頃の私はいたって健康体だった
いや、それは少し語弊がある
元々私は人より体が弱く、よく体調を崩してはペンギンに迷惑をかけていた
そんな彼はいつも私のためになんでもしてくれた
私は世話を焼いてくれるペンギンに甘え時にはわがままなんか言って彼を困らせていた



「俺はもう行くが...1人で大丈夫か?」

『心配しなくても大丈夫だよ!』

「不安だから言ってるんだが...とにかく体には気を付けるんだぞ」

『それって私のセリフじゃない?ペンギンこそ気を付けてね』



そしてペンギンを乗せたハートの海賊団の潜水艦はこの街を出航した



――――――――――



「ここまで進行しているとなるともう我々の手では...」

『そ、んな...』

「持っておそらく...」



私は難病にかかった、否、かかっていた
小さい頃からそれは私の体を蝕み気付いた時にはすでに手遅れ
体が弱かったのもその病気のせいだ
...そんなこと今更知ってもどうしようもない

私に残された時間はほんのわずか
でも病気で弱りきった私にできることなんて...
私の願いを叶えてくれるペンギンはもういないし彼の元へ行くことも到底できない
最期に1度でも会いたかったけど
そこで私はペンギンから聞いたあの言い伝えを思い出した



―この海に私の想いを届けてもらおう



  
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