過去拍手

□2016.4.4〜2018.3.1
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『歪だけど、ここが良い』



「飛段、お誕生日ですね」

「なんだよ急に。今更誕生日だとか言われても、嬉しくもなんともねェんだよ」


自身の鎌を手入れする飛段の背中に投げかけると、全く嬉しくなさそうな声が返ってくる。
それは何となく予想してたけれども。


「どうせオレはもう登場しねーんだし?」

「原作の話をするんじゃありません」

「んじゃアニメかァ? そりゃこの前、久々に出番が来たかと思えばよー無限月読の世界で、なんでもすげー忍が書いた話の中でだったじゃねェか。オレは、もっとこう……儀式をバンバンするのを想像してたのに」

「飛段のファンからするともっと見たいよね。第四次忍界大戦でも穢土転生されることなかったし」

「それを言うか? つか、テメェはさっきからなんなんだよ!」


飛段が私を見て叫んだ。


「何が?」

「何が、じゃねーよ!! んな真剣な目でまるで尋問するかのように見てるじゃねェか! 気が散るっての」


青々と茂る大草原には至る所に大きな石がある。その一つの上に体操座りで腰かけ、まるでエ〇ァの主人公の父親のあの有名なシーンのように両手の指を絡ませ、肘を膝につけている私。
あのような渋い声は出ないけれどね。


「穢土転生されずにどれだけファンが嘆いたことか……。デイダラもサソリも、角都もイタチもリーダー(を操っていた長門だけど)も穢土転生されたというのに」

「うっせぇ! オレはな、まだ生きてんだよ!! あの穴の中で!」

「そんなはずはない! 作者曰く、飛段は栄養を取らないと死ぬって言ってた!」

「んな裏事情、持ち出すんじゃねェよ! 生贄にするぞ!」


私は石の上から下りると、草原の上に寝転んだ。
澄み渡る青天。夏雲がもくもく遠くで風に身をまかせ流れていた。

その綺麗な光景に思わず溜め気を吐いた。


「辛気臭ェな」

「うるさいわね……というか、飛段誕生日なのに何で夏雲が出てるんだろうね」

「ハァ?」


四月の空とは思えない。むしろ八月の空だ。


「……まぁ、そんなことどうでもいいか」


目を瞑る。ここは居心地がいい。
優しい風が頬を撫でる。


「……」

「……」

「……オイ」

「……」

「……」

「……何、折角静かな雰囲気楽しんでたのに」


目を閉じたまま応えると、飛段が隣に来た気配。
そして、私と同じように寝転んだ。


「ずっと……こうしていたいもんだな」

「……!?」


思わず目を開き起き上がる。


「飛段ってそんなこと言うようなやつじゃないでしょ!?」

「馬鹿にしてんのか! オレだってそう思うこともあるっつーの!」

「そうだっけ? 気持ち悪っ」

「オイ! 最後、何っつった!」


ギャーギャー言い合うものの、何となく居心地良くて泣きそうだった――。






――……‥‥

(ここが――無限月読の世界だと言うことを、私は忘れている)



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掲載期間:2016/4/4〜2016/6/5
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