過去拍手

□2015.4.3〜2016.4.4
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『立ち入り禁止の場所の秘密〜前編〜』




――ここ……だ…………れ

誰だ?


――だし……よ


暗い森。ここは知ってる。


――頼むから……


入っちゃいけねーって言われているところだ。


――ここから出してくれ



「!」


窓の外を見ると暗かった。デジタル時計を見れば、午前四時二十四分。

シカダイは左腕で顔を覆った。


「夢か」


鮮明に覚えている。

自分の家が所有する森の中に自分一人がいる。現実とは違って昼間なのに薄暗く、不気味な雰囲気が辺りに立ち込めていた。

人の気配はないのに、声がする。それを頼りに進むと、奈良家の森なのに大人しか入れない場所に辿り着いた。
現実では頑丈な柵で、鍵もかかっているのに夢の中では何故か開いている。

シカダイが中に入ると、草も生えていない地面が一か所。その地面には、封印術が施されていた。

助けてくれ、ここから出してくれ――。

そこからその声は発せられていた。恐くて立ち去ろうとした時、さっきとは違う、はっきりとした声で「ここから出してくれ」と。
振り返えった瞬間、シカダイの視界に何か恐ろしいものがいた気がしたのだ。

しかし、それも一瞬。見た瞬間、目が覚めた。


「妙にリアルで変な夢だったな……」


とてもまた寝れる気がしなかった。シカダイは布団から出ると、乾いた喉を潤すべく台所へ向かった。

――奈良家の子供なら、疑問に思う立ち入り禁止の場所。自分達の管理している森なのに、何故立ち入り禁止なのか。
そこは大人は入れるのに、子供は駄目。子供達は気になって親に聞くのだが、誰も教えてはくれない。
「大人になったらね」と言うばかりであった。

シカダイも気にはなったが、どうやっても父であり一族の長であるシカマルは教えてくれないと分かっていたし、考えるのも面倒なのでその日が来るまで忘れることにしていた。

しかし、夢を見たことで再びあの場所の秘密が気になってしまった。


「……めんどくせー」


思い出してしまったことへの面倒さを、飲み込むようにシカダイは冷えた茶を飲み干した。






――……‥‥

(めんどくせーけど、大人になるまで待てねぇ)
(どうやって、大人の目を掻い潜るか考えねーとな)



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掲載期間:2015/8/15〜2015/10/2
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