過去拍手

□2014.4.4〜2015.4.3
2ページ/7ページ

『間違い手紙』




最近、私の愛鳥がおかしい。
いや、体調がどうとかそういう問題ではない。どこからともなく手紙を運んでくるのだ。

元々、伝達用の鳥なので手紙を運ばせていたのだけどある日突然、知らない人からの手紙を運ぶようになった。
最初は、無視をしていたが定期的に外に離してやっている時に手紙を持って戻ってくる――そうなっては無視も出来ないわけで、いつの間にか私とその見えない相手との文通が始まった。

今日は、どんなことがあった。美味しい食べ物を見つけた。これは不味い。
等、他愛のない話ばかりをやり取りした。
そんなことが一年続いたある日、見えない相手との文通内容におかしな点が目立ち始めた。

前からそういうのはあったが、特に触れる程ではなかった。それでも文通は成り立っていたからだ。
しかし最近、それが触れなければならない程に無視出来なくなった。

具体的には、どうやら向こうが私を誰かと間違えているようなのだ。
ものすごい、重要そうな機密書類らしきものが送られてきたり、もっと酷い時には「援軍に来てくれ」っていう文書。

――私は誰と文通しているの?

内容が内容なだけにだんだん怖くなって、私は手紙の返事を躊躇った。
だけど、返さなかったら催促の手紙が来た。

そうなれば、返さなければいけないわけで私は思い切って「誰かと間違えてません?」と送ったのが三日前。
思えば、長く文通しているのにお互い名前を名乗ったことがなく初めて名前を記載したのだ。

すると今日、私の家に怪しい男二人が現れた。
あまりに怪しいので思わずドアを速攻で閉めたが、壊された。拳一つでぶっ壊れた木のドアに、恐怖を覚えた。だからこそ開けなければならない気がした。


「ど、どちら様ですか……?」


恐る恐る聞くと、男たちは無言で何かを差し出した。受け取ってみると、それは私が送った手紙の数々。
あっ、と声をあげると男の一人が


「これ、お前か?」


と聞いて来た。まだ恐怖もあり、頷くとその男は勢いよく頭を下げた。
と思ったら、もう一方の男に頭を押さえつけられているだけのようだ。

もう一方の男が口を開く。


「この馬鹿が相手を間違って今まで手紙を送っていた」

「え?」

「今までこいつが送った手紙を出せ」


睨まれ、怯んだが私は家の奥から手紙を入れたケースを持ってきて開けた。


「これですが……」

「誰かに見せたか?」

「いえ、誰にも」


そう言うと、怖い男は手紙だけを取り服の中にしまった。


「手紙の内容は全て忘れろ」


そう言って、男は背を向けて歩き出した。


「まっ、角都! 置いていくな! 本当、すまねぇ!」


私と文通していたであろう男は、去った男の後を追った。
私の愛鳥は、その後ドアの隙間から入って帰ってきた。

嵐のように訪れた出来事だったが、この一瞬っで私の文通は終わった。
まるで今までのが夢のように――。





――……‥‥

(飛段、次間違えたら殺す)
(それをオレに言うかよ)
(デイダラの鳥とあれを間違え、一年もデイダラだと思ってやり取りしていた馬鹿には三度死んでも足りんくらいだ)
(いや、確かに最初は可笑しいと思ったけどよ何かと役立つ情報が書いてたりするんだよなー!デイダラちゃんと一年以上会ってねェから、確認しようがなかったんだって!何度も言うけどよー)
(確認も何も、デイダラの鳥と生きた鳥を間違う貴様が悪い)



□■□■□■□■□■□■

掲載期間:2014/4/4〜2014/6/2
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ