過去拍手

□2013.1.2〜2014.4.4
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『甘く見たことを後悔させてやる』




「何で……」


呟いた言葉は、遠くで聞こえる爆音や轟音をも耳から消せるほど重かった。

戦争なんて、実際起こってみれば血と泥の臭いしかなった。
本当にリーダーが求めていたことは、こういうことなのだろうか。
無抵抗の子どもや老人が巻き込まれ、死に――。

目の前で起きてることは非現実的なもので、死者が生き返るなんて信じられなかった。


「裏切ったのか」

「今の暁には、ついていけない……」

「……」


木の葉に敗れた兄とかつてコンビだった相手。目の前に対峙する彼は、紛れも無く死んだはずの角都だった。


「俺は体が自由に動かん。お前のことを殺そうとしているらしい」

「裏切り者だから、か」


途端、迫って来る角都。まともに戦って勝てるはずがない。
兄のように不死身ならまだしも、経験も技量も全て負けていた。


「くっ……」


こんなにも簡単に吹き飛ばされしまう私を殺し、あの男は操ろうとしているのか。それとも、殺すだけ殺して放置されるのか。


「角都、止めて」

「無理だ」

「っ」


振り下ろされる腕を間一髪避けるものの、すぐさま次の攻撃が襲う。逃げることしか出来ない私は無力か。
とうとう背後に木が迫った。逃げ道はない。


「死ぬぞ?」

「……」

「貴様も飛段と同じ、馬鹿だ」


かもしれない。死というものが迫っているのに、逃げる手立てが思い付かない。

角都の腕は容赦なく振り下ろされた。


「っ……」

「……」


しかし、いつまで経っても痛みはなく――。
目を開けると、目の前に角都の腕があったがそれ以上は動かなかった。
そして、スッと腕が引かれる。


「どうしたの?」

「どうやら目標<ターゲット>が変わったようだ」


角都の体はそのまま海の方に向かった。


「……私は、いつでも殺せるってことか」


力が抜け、その場にへたり込んだ。
と同時に、妙な虚しさが生まれる。

あいつがやった死者を転生させる技。
生き返ったかつての知り合い。
会えたのは嬉しいけれど、意思とは関係なく戦争の手駒にされた。

そして、自分の無力さ。

こんなにも、悔しく哀しいことがあるだろうか。

私は――間違ってると思った。
亡きリーダーが望んだ平和は、あの男がいる限り訪れないだろう。
だったら、


「私が変える」


力はない。けれど、元暁の一員としてかつての暁の仲間が兵器として、一人の男に使われるなんて嫌だ。

奴らは平和なんか望んじゃいないかもしれない。
無力な私にも出来ることがあるとすれば、忍連合軍を助けること。もう知ってるかもしれないが、持ってる情報を全て与えて助けること。


「……」


立ち上がって、深呼吸をした。
死に急ぐことはない。だけど、死ぬならば出来ることを精一杯たってからにしたい。

この林の向こうに、まずは行ってみよう。
私は足を進めた。





――……‥‥

(火影様、元暁の一員と名乗る女が来ていますが)
(何!?)
(……私が情報を全て提供します。その代わり、私を鍛えて下さい)
(何を――)
(今は忙しいと分かっています。でも、終わらせたい。この意味が分からない戦争を)



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掲載期間:2013/1/2〜2013/2/5
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