小説のお部屋
□恋の行方
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「女を抱く…?そんな経験はないが。」
「エ゛ェ゛――!?マジで!?」
ヤムチャの露骨な蔑みにブルマの機嫌は一気に急降下する。
ベジータも何を言われているか分からないまでも侮蔑され始められていることは理解し始めていた。
ヤムチャはそんなことには全く気が付かず、イヤラシイ笑いを顔にためながら
「じ、じゃあ、ベジータってその年になっても童て」
パシンッ!
乾いた音が響き渡った。
烈火の如く、怒りに震えてヤムチャの顔をひっぱたいたのは、ブルマだった。
「いい加減にしてッ!!
…ベジータのこと悪く言ったら,いくらヤムチャでも許さないッッ…!!」
息を大きく吸い込み敢然と言い放つ。
「女と関係を何人持ったかが男の勲章だとでも言いたいのッ!?
ベジータはね、来たるべき時に向けて一生懸命トレーニングしてるのよッ!
ヤムチャと違ってね!!」
ベジータは表情にこそ出さなかったが心底驚いていた。
まさかこの女が自分の為に仮にも恋人をぴっぱたくとは…。
ブルマにしては珍しく両手で顔を覆って激しい感情を涙を止めようとしている風だった。
ヤムチャはおろおろとこの恋人の機嫌を取ろうと情けない顔をする。
ヤムチャはブルマの顔に手を伸ばし,抱きしめようとすると
‘触らないでッ!’とばかりにブルマはヤムチャの手を振り払い,キッと真っ直ぐヤムチャの顔を見据えて更に地を這うような声で言い放つ。
「地球が危機になろうって時に,よくもまあ呑気にとっかえひっかえ若い女と体の関係なんか持てるもんだわッ!!
それとも、危機が来るからこそDNAを残そうと必死なのかしらッ!?
そりゃあ、あたしがヤムチャにキス以上、体を許さなかったから、他の女の子の体を求めてもしょうがないとは、どっかで思ってたわよ。男だしね。
でも、あたしがウ゛ァージンロードはウ゛ァージンで歩きたい。って言ったら分かったって言ってくれたじゃない!!!
分かってくれてるもんだと思ってたわよッ。」
言いながら、ブルマはあたしは本当にこんな男と結婚する気があったのだろうかと疑問が頭をかすめる。
本当に結婚する気があったなら、何故体を許さなかった?
一回思い返すととりとめもなく思うことがある。
口でなおもヤムチャに言い放ちながらも頭の片隅で思い出す…。
そういえば、孫くんが初めて悟飯くんをカメハウスに連れて来た時も、浮気のことでケンカして皆で集まりがあることも教えてあげもしなかった。
浮気しても謝って何かしら買ってくればあたしは機嫌を直すと思ってる。
何でもかんでも、女の言うことを聞くのが‘優しい’男だなんて、優しさの定義を履き違えてるわ。
…まあ、そのおかげで私の体は守れたけど。
今言葉が出てくるのはよりを戻したいからでは断じてなく、‘女のプライド’で言葉が出てくるのをブルマは感じていた。
女は男の飾り物なんかじゃないのよッ!男のステイタスや自慢のためだけに存在するんじゃないんだからねッ!
……やっぱり…‘カッコいい恋人が欲しい’や‘女性恐怖症を治したい’なんていう、動機じゃダメだったのかしらね…。
だって、それは…裏を返せば、初めから、
‘ヤムチャ’じゃなくても…。‘あたし’じゃなくても…。
そう言っているようなものだわ…。
たまたまそこにいたのが、あたしやヤムチャだったってだけで…。
それでも…若い時にはそういったことも必要だったのかもしれない…。
だけどこれだけは言ってやるわ。
仕事にも当てはまる。
恋愛にも当てはまる。
家族にも当てはまる。
「…純粋に闘うことに喜びを見出して,強くなろう,強くなろうとしている
ベジータや孫くんの方が億倍男らしいッ!!!」
ブルマは一気にそこまで捲くし立てて、息を吸い込み今度は極力声を荒げずに言う。
「…出ていって。ヤムチャ。悪いけど、今まで長い期間隣にいた気になってたダケなんだわ…。お互い。
…だからもう、ヤムチャとはただのナカマに戻りましょ。お互いのためだわ。
今日限りでうちから出ていって。
今までありがとう。」
そこまで言い,目もくれずその場から立ち去るブルマの様子にヤムチャは成す術もなく立ち尽くす。