小説のお部屋U
□belief
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〜 belief 〜
「キャア―――――――ッ!!」
悲鳴と共に爆音が響く。
ブルマとトランクスの乗っていたエアカーが人造人間によって破壊された。
一瞬、そちらに目を向けようと本能が働いたが・・・、
強い自制心を持って目の前の敵を追うことに専念する。
きっと,誰かが助ける。
俺が真っ先に行かなくとも誰かが助ける。
そう確信しているからこそ,俺は敵を追うことに専念できる。
そう。俺にそう教えたのは誰あろうブルマだ。
『・・・人造人間、現れたらあたしも見に行こうかな〜。』
『・・・・・赤ん坊がいるだろ。』
『えー。でも見たいわよ。
それに、この子もサイヤ人の血を引いているしね〜。
小さい頃から強い敵を見せといた方がいいんじゃないかしら?』
『・・・・・・。』
脆い身体のくせに、度胸のある奴だ・・・といつも思う。
その度胸は,好奇心はどこから沸いてくる?
ブルマは続ける。
『人造人間を見たいのは、あたしのワガママだから・・・。
あたしに何かあっても、何があっても、あんたはあんたのことをすればいい。』
そう言って、不敵に笑う。
続いた言葉はベジータ自身をも不敵に笑わせる言葉だった。
『だいたいあたし、運良いし〜。
誰かと違ってナメック星に行っても無事生還したひとりだから〜。』
茶化しながら言っていたが次の瞬間、眼に強い光を伴う意志のある真面目な顔になった。
『それに,あたしに何かありそうなときは,誰かが絶対助けてくれるから。
絶対誰かが助けてくれる。だから大丈夫。
あんたは自分のすべき事,成すべき事をして。
そのために今まで血の滲む努力をしてきたんだから。』
そうだ。意思のないただの木偶など、俺にとっては何の価値もない。
来たいと言うなら、来ればいい。
見たいと言うなら、見ればいい。
お前の意思であればそうしろ。
『足手まといにはなりたくないから。』
『・・・見上げた根性だ。』
『・・・でしょ?ふふ。アナタの選んだ女ですから。』
ブルマは加えて言い募る。
『・・・でも、あんたのことも信じてるわよ。
無事に人造人間を倒すって。
倒して、ちゃんとあたしのところに戻ってくるって。』
そういって鮮やかに笑ってみせた。
本当だった。本当にちゃんと助けた奴がいる。
「何故助けなかったんですか?あなたの奥さんや子供でしょう!」
「邪魔だ。すっこんでろ。」
俺は藤色の髪の青年に言葉を発して、敵を追う。
そうだ。誰かの傀儡になど俺は興味もない。
自分の意志で自分の足で立って歩く。
それ以外は認めない。
脆い身体に強い意志を宿した、地球の女・・・。
面白くなりそうだ。
fin
(2009.6.15)
→あとがき