小説のお部屋

□desire
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もっと触っていたい。もっと、触れていたい。
そう思わせるような白い綺麗なキメの細かいなめらかな肌…。

そう思ったことにベジータ自身が驚いた。


ヒトの肌に触れてみたいと思ったことなぞ、ついぞ覚えぬ。





〜 desire 〜













弾けんばかりに笑ったかと思えば、今度はぽろぽろと涙を流してみせる。


一体なんなんだ。と最初は思った。

苛立ちが募った。この俺様の視界に入るな。と。



それが・・・
いつからだろう、視界に入っても苛立たなくなったのは。
いつからだろう、自身の眼がその姿を探すようになってしまったのは…。


「ブ・・・マ・・・。」


口から出てしまった。
名前を呼んでしまって我に返る。


俺は一体何をやっているんだろう。
どうしたというのだ。

ガラにもない。


どうかしてる。


思っても答えが出ないことをブツケル様にトレーニングに打ち込む。













そういえば、カカロットの野郎は超サイヤ人になった時
あのクリ野郎がフリーザに殺されたのを見てキレたという。
何か、きっかけが必要なんじゃないか?
同じようなキレる沸点が。


父王が殺されたところを想像してみる。
弱かったから負けた。それだけだ。
なんとも思わぬ。

自分が殺されたところ・・・。
悔しさと絶望がない混ぜになった感情。
もっと強くなってみせる。


…あとは誰だ。
身近な奴の方がイメージしやすい。
カカロット・・・。いや、奴を倒すのはこの俺だ。



ブルマ…。
脆弱な地球の女のことだ。すぐに殺されてもおかしくない。
瞬間。リアルに思い浮かべられる。
苦しそうにうめく顔、こちらをみて何か言おうとしてる。
俺に手を伸ばして・・・。

パリッ・・・。自身の身体を何かが走った。


更に集中してイメージし続ける。
夢か現か・・・。

「・・・ベジー・・・タ・・・・。・・・・生きて・・・。」


微かに吐息まで聞こえる・・・。掠れる声まで、リアル・・・。


「・・・・・・あんたに・・生きて、欲し・・・・。」


飛ぼうと思っても気を高められない・・・。
ブルマに駆け寄ろうとするが、足がもつれて上手く駆け寄れない。


「ブ・・・マ・・・。」

「・・・・ベジー・・・・・タ・・・。」


涙声で小さく言った刹那、手がダラリと地面に落ちる。
顔や身体中が血だらけで・・・。


バリッバリッ・・・!!!
全身に電流が走ったような感覚・・・。



「ブルマっ・・・。ブルマッッ―――――!!!!!」

叫んで、ビクリと身体が痙攣した。
現実に引き戻される。



気がつくと自身の身体が金色に輝いていた・・・。
自分の手をまじまじと見つめる。


「・・ブル・・・マ・・・・。」

微かな声で呟いた・・・。手が微かに震えている。
その両手で顔を覆った。

自身のイメージが未だに、夢か現か解らぬ・・・。

超化している身体に慣れ、ゆっくりと超化を解く。




重力を切って、慌てて重力室を出た。

家の中では飛ぶなと言われているが、一目散にあの弱い気を探す。


ブルマ・・・


現実ではないとは解っている。自身の想像の中の話だ。
だが、落ち着かない。


「おいッ。ブルマはどこだ!」



通りかかったブルマの母親に問い詰める。
「あら、おはよう。ベジータちゃん。」
「ブルマはどこだと聞いている。」
「ブルマちゃん?今出張にいっているわよ?」
「出張?」
「別な地域に行ってお仕事してるの。」
「どこだ。」
「確か北の都・・・。」
「北だな?」

言うが早いかベジータは金色に変わり、あっと言う間に飛び立つ。


いつもは何事にも動じないブリーフ夫人が少しあっけに取られて見送っていたが、ベジータの飛んで行った方角を黙って見つめにこやかな笑顔を向けた。
















北の方の街をいくつも飛んだ。
上空からブルマの気を探す。

ブルマの微弱な気を上空から探すことは通常であれば困難なことであるが、今は戦闘時のように頭の隅々まで冴えわたっている。


幾つめかの街の上で漸くブルマの気を見つけた。

小高い丘のリゾートホテルの最上階にブルマはいた。
バルコニーに降り立ち、壊さないように窓を叩く。

ブルマがそれに気が付き、驚いた表情でカギを開けた。



「べ、ベジータ…?どうしたの?こんな所まで・・・。」


それには答えず、ベジータはブルマに近寄り

思わず抱きしめる。



映画の中の抱擁のようにブルマは自身に起きたことが解らなかった。

何事かと思った。

「べ・・ベジータ・・・?」


すごい力に身体に圧迫を感じる。

「べ・・・ベジータ。痛い…。」
「……。」
「・・・ちょっと痛いわ…。」


言われるがまだ、身体の中に震えが微かに残り、力を弱めてやる余裕がない。
腕の中の温もりを確かめるように、いきなりブルマの口に勢い良く口づけ、貪るようなキスをする。


ブルマは性急なベジータにどうしたのだろう・・・。と朦朧となりかけた頭で考える。


・・・何か、に、怯えてる・・・?

それで、わざわざここまで飛んできたのだろうか?
あたしに会うために・・・?



ブルマはベジータの背に手を回し、優しく撫でた。

「大丈夫よ・・・。大丈夫。」

言う言葉も激しいキスに飲み込まれる。


熱い抱擁を返しながらブルマ自身も身体が火照り始めたのが解る。




ベジータはもっとブルマの存在を確かめたくて、ブルマの身体に更にキツク手を回す。



いつも余裕シャクシャクの男が余裕がない。そしてその時にこのプライドの高い、自分の愛してる男が自分の身体を求めてきてくれる…なんて。女としては至上の喜びに近い。

ベジータ以外、他の男の体は知らないが、他の男がこうして来てもきっと自分は笑いながら「しっかりしなさいよっ!」と背中をバシンッとぶったたいてやる自信すらある。




だけど…ベジータは違う。

ベジータだけは受け入れたくなる。

ベジータだけは支えてあげたいとすら思わせる。






それは…今まで孤高に生きてきた男に対しての尊敬や畏敬の念があるかもしれない・・・。


それでも、自分はベジータが求める限り受けてあげたい。


結構、あたしもベジータに溺れてるわね…。

そうでなきゃ、ベジータだけを受け入れて来れなかったかもしれない。



ブルマはベジータだけを受け入れてきた自分に満足する。

我ながら見る眼あるわ、あたし・・。





ベジータの雄弁な態度に、朦朧と何かを思うのも、そろそろ限界に近い。

明日も会議や視察があったが、もうそんなことは思考に登らず、ブルマはベジータの身体の熱さに身を任せる。






ベジータは、ここまでブルマを探して飛んできてしまったことに自身で驚嘆したが、


そんなことは後で考えればいい。


今は、ブルマが生きている実感が欲しくて、欲しくて・・・。

その華奢な身をかき抱き、ブルマを貪るようにその身に溺れようと思った―――――。





























(2009.10.4)

→あとがき
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