小説のお部屋
□try to find out the truth♪
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ラジオ番組に出演が決まったブルマ。
カプセルコーポレーションの宣伝も兼ねて某スタジオを訪れた。
簡単な説明の後、ディレクターの
「DJに合わせて思いの丈をぶつけてください。」
の言葉の後にすぐに本番が始まる。
〜 try to find out the truth♪ 〜
軽快な音楽とともに女性DJが語り始める。
「さて、今週も始まりました。
今をときめく、皆が羨む時の人
カプセルコーポレーションの社長令嬢で自らも開発を手掛けるブルマさんにおいでいただいています。」
「ハァ〜イ。こんにちは。
ブルマよ。今日は皆さんからの質問に答えちゃうわよ◎」
「ブルマさんにハガキがこ〜んなに来ています。
大抵は女の子からの恋愛の質問が多いようですが。
今日はブルマさんにいろいろ質問しちゃいましょ〜う♪」
「まずは、こちらのハガキ、最も多かった質問のひとつ
‘浮気性のカレに悩んでいます。どうしたらいいですか?’」
機嫌良くDJの挨拶をきいてたが、始めての質問にブルマの眉がピクリと反応する。
「浮気性…?それはそいつのサガだわ。そんなヤツとはすぐに別れた方がいいと思うわ。
‘あたしがいなければ、この人はどうなっちゃうのかしら…。’なんて、そんな風に思わなくていいわ。
そう考えるあなたはとってもいいこなんだと思う。だけど、まず、自分の幸せを考えて?
長く付き合ってもいいけど、見極めも大切。違うんじゃない…?と思ったら流されない意思も大切だわ。」
「な、なんだか、もしかして実感籠ってますか…?すごい説得力を、隣にいてひしひしと感じます。」
「ええ、まあ。」
ほほほ。とブルマは笑い、その場をやり過ごす。
「えー。次に質問の多かったおハガキです。‘彼が体ばかりを求めてきます。
私はまだ、彼とは体の関係になるのには抵抗があるのですが、彼を繋ぎ止めるにはそうしないとだめですか?’
最近の女の子らしい質問ですね〜。いかがですか。ブルマさん。」
この質問にもまたブルマの眉がピクリと反応する。
「納得してないなら、自分が納得してないなら、身を任せちゃダメ。」
あっさりと一刀両断し、ブルマは続ける。
「一番最初の質問にも言えるけど、確かに、男・雄は女・雌と違って自分の身体に子供が宿らないから、自分のDNAかどうか分からないので、女に比べて遺伝学的見地、人類学的見地から浮気性の確率が高いわよ。
でも、それを理性で抑えるのが人間で、自分のことを大切にしてくれる男に身を任せたいでしょう?
大体、体だけを目的にする男なんてそれ自体、女性に対して失礼だわ。」
フンッという鼻息が聞こえてきそうなほど、感情を込めて言い放つ。
DJが舌を巻くほどの熱弁ぶりに、一瞬言葉を出すのが出遅れる。
「ず、ずいぶんな熱弁ぶりですね〜。
きっとリスナーの方も喜んでいらっしゃいますよ。」
「こういうのは熱く語らないと伝わらないでしょ。
あたしは全ての女の子に幸せになってもらいたいのよ。」
一瞬、鼻白んだDJだったがそこはプロ。
「そ、そうですね〜…。それではここでリクエストの音楽をどうぞ。」
なんなく、曲のリクエストをかける。
曲が流れているしばらくの間、ブルマは自分の思いにふける。
どっかで解かっているハズよ。
一瞬でも思うハズよ。
・・・違うんじゃない?って。
そうしたら、ちらっとでも、そう思ったら、本能とか第六感とかに従った方がいい。
その人の条件や長い年月付き合ってきたんだから…なんて何の足しにもならないんだから。
それでも、あたしの元に戻ってくる・・・なんて表面上のことを思っていたけど
でも、心のどこかで思ってた。
‘・・・それって違うんじゃない…?’
どんなに、口で「ブルマだけだ。本気で好きなのはブルマだけだよ。」なんて言われても
最初の若い時はあたしもその言葉にほだされてたけど、回数続くとこれはコイツの常套句なんだな。と思えてくる。
お生憎様。女の子はそんなに馬鹿じゃないのよ。
女の子はそういったニオイをすぐに嗅ぎ分けられるのよ。
他に付き合う奴もいないしなー。別れるとサビシイし・・・。なんて、思っている時点で、サビシくても何でも別れた方が絶対良い!
あたしもベジータに逢う前まで、一応付き合ってたけど、
何年も前から心はもうとっくに冷めていたのよ。
だってそうでしょ?居候のクセに、ちゃんと働きもしないで、気が向いた時だけアルバイト。
何年も何年も光熱水費も食事も全部うち持ちで、学校に行くわけでもない、資格を取るわけでもない。
CCのことを手伝うわけでもない。
あたしとの将来を真剣に考えていたらそんなこと出来ることだと思う?
出来ないことだと思うわ。
やることといったら、他の女の子にうつつを抜かして、やれ飲み会だ、やれデートだ。
‘こんなにモテちゃったよ〜。俺ってモテるんだよね〜。
若い頃ならいざ知らず、そんなこと言われてあたしが嫉妬するとでも思っていたのかしら?
‘いや、でも俺にはブルマだけだから。’
・・・しっらじらしい・・・。
そんなこと言うのなんか、もういい加減にしてほしかった。
そんな男に体なんか任せられると思う?
あたしじゃなくたって、任せないわよ。
女の子は自分に対しての感情を敏感に嗅ぎ分けているのよ。
小さい頃から訓練されてるの。
女の子は産まれた時から女の子。ってよく言うでしょ?本当なのよ。
最初はなんとも思っていなかった、居候費も光熱水費も、浮気されるようになるとだんだんと気になってくる。
あんまり、続くと今度はうちに居座る為の口実にあたしの‘恋人としての立場’を利用してるんじゃないかとすら思えてくる。
ちょっと心狭いかな・・・。そんな風に思われたくないから、平然としてたけど、この際ぶちまけてやるわよ。
女の子は飾りでも言い含められる存在でも、ましてや馬鹿にされる存在でも、ゾンザイに扱われる存在じゃないのよ!
大切に扱われる存在なの!
女の子はその身に子供を宿せる存在なんだから。
生物界の雄という雄は雌に子孫を残してもらわないと子孫が絶えるんだからね。
(雌雄同体や細胞分裂で増える種族は別にして。)
覚えておきなさい。男ども!女の子は弱いけど、でも案外強くて、本気で大切にされてるか表面上かなんて実は解かってたりするものよ。
まあ、その時の感情や状況、ほだされかた、年齢とかにもよることもあるけど、
でも、女の子は自分が心から幸せになれる人を知っているんだわ。
そしてその時を待ってる。
心から幸せになれるそんな人とめぐり逢うのを積極的に待ってる。
追いかけてもいい。待っててもいい。
その人に合わせて変えたっていい。
だけど、自分が大切にされてる。
その実感を、感覚を感じ取れる人じゃないと…。
そこまで思って、DJの声に我に返る。
「どうしました?ブルマさん。大丈夫ですか?トーク中とはうって変って静かでしたが…そろそろリクエストの曲が…。また、トークに戻りますよ…?」
「・・・え?…あ。えぇ。大丈夫。さあ、どんどん答えちゃうわよ。」
「それならよかった。では・・・。」
DJはにこやかながらも真剣さの残る表情で番組に戻る。
「素敵なリクエストありがとうございましたあ。この季節にぴったりでしたね。
さあ、どんどんおハガキを読み上げます。
‘浮気されるのは私の責任ですか?’…世の中の女の子は恋の悩みがいっぱいですね〜。
いかがですか?ブルマさん。」
「…浮気されるのはあたしにも責任が…なんて思わなくていいと思うわ。
あたしがこの人のワルイ所を直してあげよう。直せるハズ。直ってくれるハズ。なんて思わない方がいい…。
相手がこちらにベタ惚れの時はあるかもしれないけど、基本、人間が何年もかかって形成してきたものは簡単にはヌグエナイ…。これはあたしの実体験よ。
こちらが直そうとして直っているのであれば、もうとっくに直っているわよ。そいつも。
だったら、そんな奴に時間、お金、労力を割いてないで、とっとと他の男を探すべきだわ。
恋愛は勘違いも多少あると思う。もちろんそういう男にほだされる時もあるわよ。
その男しか見えない時だってある。
…そういう時はそれでもいいわ。
でも、‘…これでは。’と思ったら
‘…違うんじゃない?’と思ったら
敢然と立ち上がった方がいいわ。
世の中に男の子はたくさんいるんだから!!
男にナメた真似されたら、泣き寝入りなんかしないで毅然としかるべき措置を取った方がいいわ。
復讐しろだなんて言わないけど、東の都の言葉で’因果応報’って言葉があるでしょ。こちらが手を下さなくともそういう奴は所詮、そういう奴だわ。
でも、泣く時もあると思う。どれだけヒドイ奴でも、気の迷いでも、付き合ったくらいなんだから…。
だけど、泣くだけ泣いたら、毅然としたらいいわ。
世の中の女の子達よ…。」
ブルマはどん!と机を叩いて握りこぶしを振り上げ叫ぶ
『立ち上がれっ!!!』
これにはDJも力一杯頷いてしまった。
一瞬、自分がリスナーになってしまったことに我に返る。
なんという熱い魂。なんという率直さ。
改めてブルマという人の人柄の魅力を垣間見た気がした。
「…まだまだ、ブルマさんに質問したいことは山ほどありますが、そろそろ時間がせまってきました。
ブルマさん、皆さんに一言どうぞ。」
「…熱く語っちゃったけど、でも、あたしは世界中の女の子という女の子に幸せになってもらいたいわ。
この放送を聞いていただいている皆さんに伝えたいわ。
自分を、自分の身体を安売りしちゃだめよ。
だって、いつか出逢う、自分の運命のその人のためにとっておきたいじゃない?
きっとその人も自分と出逢う為に・・・と思ってくれたら感慨深いと思うわ。
あたしも、もし、女の子を産んだら、きっとそう言うわ。そう、教えてあげるわ。
女の子にはきっと必ずそういう人がいるから。
自分だけの、自分だけを大切にしてくれる人がきっといるから。
その方が良い未来を手に出来るわよ。絶対に。」
誰にともなく、ブルマはウィンクする。
DJはその顔に見惚れた。
女同士だが…なんと魅力ある顔をする人なのだ。
そして、このブルマという人がどういう恋愛をしてきて、更に、今、夢中になっている人がいることも解った気がした…。
「・・・ブルマさん、今日は本当にありがとうございました。それではまた来週のこの時間お会いいたしましょーう。See you next week !!」
お決まりのセリフを言ってDJはラジオをしめる。
DJはブルマの顔を伺い見ると、少し俯き加減で顔にかすかに笑顔をためていた。
「…ブルマさん。恋をしてるんですね?」
「・・・ええ。わかる?」
「なんとなく・・・。」
「この年で恋ってのもの気恥ずかしいんだけど…。」
「何言ってるんですか。女の子は例え結婚しても旦那に恋したいものでしょ?結婚してない女性なら、いくつになっても恋するのは素敵なことじゃないですか◎」
ブルマをスタジオの外にまで送りながらDJは重ねて聞く。
「しかも…、ラジオで憤慨してた人とは違う人なんでしょう?
どんな人なんですか?」
ブルマは笑い、カプセルからジェットカーを取り出しながら言う。
「わかっちゃった?えっとねー。…自分のことしか考えてないよーな奴よ。」
「へえ・・・。」
「でも…。優しいところあるの。あたしにはわかるの…。」
「…素敵ですね。・・・お幸せに。」
その言葉を聞きつつ、ブルマは手を振りながらジェットカーで飛び立った。
ブルマは何故か、今日はベジータに料理を作ってあげたい気分になった。
今日は、母さんでも、お料理ロボでもなく、あたしがベジータにたくさん料理を作ってあげよう。
ベジータは驚くかしら・・・?
あたし、メカだけじゃなく料理も得意なのよ。
こっちを向いてほしくて料理するなんて、10代の子みたい。
ブルマは自嘲気味に少し笑う。
でも…好きなんだからしょうがないわ。
好きだから、してあげたい。
好きだから、作ってあげたい。
その料理を食べてもらいたい…。
さあ、超特急で帰ろっと。
ベジータの顔が見たい。
爽やかな笑顔のもと、ブルマはカプセルコーポレーションに向けて操縦桿をきり、アクセルを踏んだ。
fin
(2009.8.11)
→あとがき