Under
□OUT OF THE WORLD
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「やぁっ…だめ、だめぇ…っ」
新八が涙声で制止の声を掛けても、触手の動きは止まらなかった。それは器用に新八の中に入り込み、緩やかに抽出を始めている。ぬめる触手の先端が過敏な神経の裏側を撫でると、そこが応えるようにひくひくと収縮するのが分かった。
「や、いや、あぁ…ッ…」
「嫌…?どこがだ?」
耐えきれない悦楽に顔を歪める新八の前で、さも可笑しそうに高杉が囁く。そうやって蔑むように見つめられるのに、拓かれた場所は何故か疼いてたまらなかった。
それを促すように弱いところを容赦なく擦られ、新八は背をしならせて喘いだ。
「いや…、あ、っや…!」
抽出を繰り返す毎に滑りが良くなるのか、触手が入り込んだ秘所はもう淫らな水音を立てるまでになっていた。出し入れの度にぐちゅぐちゅと淫猥な音を立てる自分の体に耐え切れず、少年が啜り泣くような声をあげる。
「ひ、うぁっ…ア、」
しかし屈辱を覚えれば覚える程、燃えるようなその背徳に新八の理性は焼き切れていく。だがどんなに新八の体が熱くなっても、いまだひんやりと冷たいままの触手の律動はやはり異種のものを思わせた。
がくがくと己の体を揺らし、思うままに蹂躙する生き物の向こうに佇む高杉と目が合い、強く瞼を閉じる。
(…助けて、)
少年は涙を零し、瞼の裏に感じた幻影に縋り付く。目をつむった闇の中、真っ暗なそこに、いつも自分を助けてくれた、いつも自分を護ってくれた男の姿がちらついていた。
途切れそうになる意識の底で、思う。強く強く、感じる。
「やだっ、あ、あぁ…ッ……銀さん…!」
それに縋るしかない自分はひどく浅ましく思えたが、新八は銀時の名を呟く事を止められなかった。
だがその時、突然だった。
一瞬の閃光が閃き、新八の体を貫いていた生物の動きが止まったのである。次の瞬間並々ならぬ液体がそれから噴き出し、辺りは毒々しいような赤色に染まった。新八に絡んでいた何本もの触手も、まるで意思を無くしたかのように音もなく地に落ちる。
その光景の向こうに、刀を静かに鞘に納める高杉の姿があった。
かちんと乾いた音で鳴った鍔の音色に、新八はようやく男が刀を抜いのだという事を知覚する。
同時に、触手によってずっと戒められたままだった欲望が唐突に解放され、津波のように圧倒的な愉悦が腰の奥へと打ち付けられた。
「いや、あ、あぁあっ…!」
それに半ば泣き声のような悲鳴を上げて、新八はようやく絶頂に達した。一瞬遅れ、腹に付くほど反り返っていた自身が震えて白濁を散らしていく。撒き散らされた赤と白のコントラストは新八の肢体を彩り、無機質な部屋の中ではいっそ極彩色のようだった。
「はぁっ…はぁ、」
射精後の物憂いに倦怠を感じ、新八が肩で息をする。しかし体はひどく消耗したと感じるのに、中途半端に拓かれた内部が、未だ物干しそうにひくりとわななくのを感じてしまう。
それに真っ赤になり、少年は開いたままだった脚をさっと閉じた。
「いい面だな」
だが突然愉快そうに呟かれた声に、少年ははっと息を呑んだ。頬に差し込んだ朱色を隠せぬまま、目の前の高杉から隠れるようにぎゅっと己の体を抱きしめる。しかし己の腕に飛んだ赤い飛沫にぎょっとした。見渡した辺りにも撒き散らされた濃い紅緋色に、一瞬自分が斬られたのかと早合点した新八だがどうやら事態は違うらしい。
高杉が自分を犯していた生物を斬ったのだ。何故かは分からないが、それだけは確かなことだった。
だがそう分かった時にはもう、男は新八の前に屈み込んでいた。
「…血まみれじゃねーか」
不意に喉奥で嘲った男が、ひょいと新八の顎に指を掛ける。“血”と高杉が表現したものは、不可思議な生物から噴き出した粘液のことだろう。それを一身に浴びた新八はおろか、斬った高杉だとて、血飛沫のような染みを点々と着流しに滲ませていた。
だが人間の体から流れる血と明らかに違うのは、むせ返るように甘い匂いがそれから漂っている点だろうか。
どこか思考を惑わすように甘い香りは、今や小さな部屋いっぱいに充満していた。とろりと粘りを含んで流れる赤はまだ生暖かく、新八は屈んだ高杉の頬にそれが薄く付着していることに気が付いた。
瞬間、そこから目が離せなくなる。
じっと見つめたままでいると、包帯から覗く男の右目がすっと細まった。
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