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□風味絶佳・弐
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「ったく…サボりもいい加減にしやがれ。眼鏡も困ってんだろうが」

「それは土方さん、野暮ってもんですぜ。俺はただ、新八くんの今夜の水揚げが心配で心配で」

「アンタ全く心配なんてしてなかったよね、銀さんの団子を食らってゴロゴロしてただけだよね」


極めて心外だと言わんばかりの沖田の言い草に、新八が鋭く突っ込む。そのやり取りに首を振り、土方は横にある仕立て台をちらりと眺めた。すう、と一息煙を吸い込み、それを眺めながら煙草をくゆらせる。

「そうか、眼鏡の水揚げは今夜か。…大した仕掛けじゃねーか。あの腐れ天パにしちゃあ、いいモン仕立てやがる」

「腐れってアンタ、酷くないっスか?いくら銀さんが嫌いだからってアンタ、影でコソコソ言うなんて最低っスよ」

「そうですぜ、土方さん。新八くんの言う通りだ。そんなんだから、あのテロリスト太夫と天パ太夫に敵わないんでさァ」

「うっせーぞテメーら、今度はこっちに一斉射撃かァァァ!!オイ、話が一向に進まねーだろ、頼むから進めさせろ!!」

十代コンビの息の合った攻撃に、こめかみに青筋を立てそうな勢いで土方が応戦する。顔に似合わず割合に苦労性な男の性は、上にも下にも問題を抱えたどこぞの鬼副長のようである。

その鬼副長(仮)の様子に反省を深くし、新八はペコリと素直に頭を垂れた。

「すみません。もう一回真剣にどうぞ、土方さん」

「大した仕掛けじゃねーか。あの腐れ天パにしちゃあ…って何遍言わせんだ眼鏡ェェェ!!」

「えええ、ちょっ、あんたが進めろって言ったんでしょ!?」

理不尽極まりない暴言を吐き、土方が怒鳴りを上げる。こうもキレやすい大人にはなりたくないものである(本当に)。

らちがあかないのでこちらで話を進めさせていただくと、土方が称賛した新八の仕掛けは、何を隠そう、あの銀時に仕立てて貰ったものである。先輩である銀時が部屋付きの新八の為にしつらえてくれるのは当たり前であるとしても、新八自身はどうにも心苦しくてならなかった。

今夜、それを着た自分は見知らぬ他の誰かに抱かれるのだから。

いつも通りの賑やかな面々に囲まれていても、心に落ちる暗い影に新八は抗えなかった―…



…てな訳ですぜ、姐さん方。ねっ、新八くん。ねっ、土方クソヤロー」

「『ねっ』じゃねーよ!!紛らわしいからナレーション権を牛耳るのは止めろォォォ!!」

「テメー総悟、段々語尾が悪化してんじゃねーかァァァ!!」




…新八の水揚げまで、あと数時間。


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