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□風味絶佳・弐
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「そいつァいいや。そのままいっそ昇天してくれよ土方コノヤロー」

「マジで殺されてェのか総悟!!」

「ちょっ、土方さん落ち着いて下さい!!殺るならどうぞ別の場所でェェェ!!」

ぐっと拳を握り締めて殺意を新たにする男を、新八が後ろから羽交い締めにする。自分だとてさりげなく恐ろしい事を叫んでいるものの、騒然とした場面に新八も何が何だか分からない。

新八が死ぬ気で止めているこの男、名は土方十四郎と言う。先程から話題に上っていた、沖田のお気に入りの攻撃先というのは実はこの男の事である(ご愁傷様だ)。

男は黒地に枝垂れ桜が乱れる豪奢な仕掛けをまとっていた。瞳孔が限りなく開いた切れ長の瞳は鋭いが、男全体を包む刃のような雰囲気と合わせて、凛と通った不思議な清廉さを窺わせる。目鼻立ちの整った端正な顔立ちは、廓の誰と並んでも決して見劣りしない。

しかしながら、この廓での土方は天神という位についていた。傾城の次に高い位ではあるものの、銀時、高杉に続いての廓の三番手である。


「ったく、誰の世話になってると思ってんだ。禿の頃から新造出しまで、恩をあだで返しやがって…」

イライラと落ち着かない様子で新八を振り払い、土方が仕掛けの袂から新しい煙草を取り出す。廓という耽美な場所には似合わないそれを煙管に変えるようにと散々注意を受けている筈だが、土方には変えるつもりは毛頭ないらしい。もっとも、嗜好の極みであるマヨネーズと煙草の話になると目の色を変えるのが土方という男である。

土方は乱雑に髪を掻き混ぜ、愛用のライターで煙草に火を付けた。



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