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□風味絶佳・弐
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「…沖田さん、そのお団子、銀さんのなんですけど」

言い合いの最中でもしっかり完食したのだろう(器用な少年なのである)、沖田が唇の端でぷらぷらと上下させている団子の串を、新八が眼鏡の奥からちらりと睨む。それに悪びれた様子もなく起き上がり、沖田は大きく伸びをした。そのまま口を開けてあくびをする姿はだらしが無いのに、どこか高級な子猫の仕草を見ているようでもある。
こうして黙っている姿を見ていると、嗜虐的な嗜好があることなどまるで嘘のようだった。

沖田はあくびの後、ちらりと新八に目をやった。そのまま、ひどく面倒臭そうに一言。


「ああ、ツケといて下せェ。旦那には出世払い致しやす」

「嘘つけェェェ!!僕が怒られるでしょうが!!あんた何回そうやれば…!!」

先程すっ転ばされた怒りも心頭の新八が、全く反省の色もない沖田にいよいよ説教しようと決意した、丁度その時である。
襖がすぱんと横に滑り、物凄い剣幕の男が部屋にどかどかと入ってきた。

「総悟!!テメェ、何つーモン渡しやがる!!」

「あれ、ニコマヨ中毒。死ななかったんですかィ」

「死んだわ!!お前のせいで一回咥内が死んだ!!」

右手にマヨネーズを握り締め、憤慨した様子で煙草をくわえている目付きの悪い男。三白眼気味の瞳孔は限りなく開いている。男はその鋭い目で沖田を睨み据え、ぎろりと一瞥した。

しかし、恐ろしく殺気立った男の様子に新八は心底肝を冷やしたものの、どうやら肝心の沖田には全く効いていないらしい。彼は再度寝そべったまま、淡々と言葉を発した。



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