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□風味絶佳・弐
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「ああ、嫌になっちゃうなぁ。沖田さんより先に水揚げされるなんて…」
「何でェ、俺より先に揚げられるのが嫌だってかィ。あ、一番最初に俺に犯されたいっていう話ならいつでも相談に乗りやすぜ」
「違うに決まってんだろうがァァァ!!!!…だって僕、まだ心の準備ってもんが…」
本気とも嘘とも言えない神妙な顔つきで、沖田が新八の太ももに手を置いてくる。それをピシャリと払い落として怒鳴り、新八はふと顔を曇らせた。
そんな彼の深刻な様子に、訳知り顔をした沖田がうんうんと頷いてみせる。
「童貞を捨てるより先に、ケツの処女を奪われる…新八くんらしくていいじゃねェですかィ。それに、慣れたら俄然良くなるらしいですぜ。そしたら一発俺にも試させて下せェ」
「ちょっと、止めてくんない!?そういうトラウマ植え付けるような言い方、止めてくんない!?何で沖田さんが僕で試すんですか!!つーかアンタ何笑い堪えてんだよ、童貞なめんなァァァ!!」
勝手な事を言い出し始める沖田に掴みかかろうとした腕をひらりとかわされ(こういう彼の反射神経は神業的なものがある)、代わりに新八は嫌という程畳に額を打ち付けてしまった。しばしの間の後、ひりひりと痛む額を庇いゆっくりと起き上がる。
新八が体を起こす頃には、沖田はもう素知らぬ顔で戸棚の甘味を漁っていた。
新八と同じ時期に禿になった沖田は、これまた同じ時期に、同じく廓の新造になった。お揃いの赤い振袖は新造の仕様なのだが、沖田が着ていると何故かとても艶っぽく見える。着物のあでやかな深紅は女性のような顔立ちの彼を華やかに引き立たせる為、既にお客の注目も高い。末はお職か傾城か、と今から囁かれる有望株だ。しかしながらそんな外見の麗しさとは裏腹に、内面はどう転んでも沖田である。
今、早くも再び寝そべってぽりぽりと腹を掻く姿はだらし無さの極みだった。
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