戦国への来訪者

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「お初にお目にかかります、武田信玄公。伊達政宗公から知らされているとは存じますが、私は月宮。魔物の討伐を専門とする者達の端くれにございます。此度の依頼、全霊を持って当たる所存に御座いますれば」


ポッカーン。

今の佐助の心情と表情をこれほど的確にたとえられる言葉は無い。

だってあの月宮が。いくら若くても国主の前で胡坐で敬語も使わず挙句の果てには憎まれ口すら叩いていた月宮が。



『こんな喋り方できたんだ…』



しかし佐助がそんな事を考えたのを察知したのか、月宮から一瞬だけ物凄く鋭い眼光が飛んだ。
それは本当に一瞬ですぐに消えはしたが、佐助の心臓はちょっとばかし煩くなっている。



「うむ、そなたの事は伊達からも、噂でも聞き及んでおる。しかしこれはどうも信じ難いのじゃが…魔物が巣食う、こことは異なる世界から来たというのは真か?」


内心『あのヤロ余計な事言いやがって…』と舌打ちする月宮だったが、表面はそんな事を微塵も考えさせない無表情のまま、淡々と答えた。



「私としても納得し難い話では御座いますが、奥州の2人より聞き及ぶ限りそうとしか考えられず。ああ、信じて頂かずとも結構です。私は依頼を遂行するだけに御座いますので」

「ほぉ。信じられずとも、と?」

「はい。仮に私が元いた場所で、同じような現象が起こり、異世界から来たと言う者と会っても私は信じぬでしょうから」


「……そうか。月宮よ、今宵は休め。明日、早速だが件の魔物について話そう」

「是」





*****


「アンタ、あんな喋り方出来たんだね」

「猿飛殿はこちらの方がお好みですか」

「冗談!やめてよ、鳥肌立ったじゃん」


休め、と宛がわれた部屋に月宮を案内した佐助が半ば吐き捨てるように言えば、それに応えて悪ノリかは知らないが月宮も依頼主に対する言葉使いで言葉を紡ぐ。

佐助の第一印象とその言葉使いは対極過ぎるのだ。




「俺だって何も常にこの口調って訳じゃねェよ。むしろ依頼主に対してはちゃんと使うさ。…表面上は」

「本気で敬う気は無いって事?」

「そもそも敬うって感情がよく分からねェし。親父に言われたから覚えたけど面倒くせェ」



言葉の端々に交じる違和感。

それを佐助が問いにしようとした瞬間、ソレはやって来た。








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