戦国への来訪者
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side:政宗
政務をサボって間もなく、肌が泡立つような殺気とも怒気ともつかないauraを感じて立ち止まった。
一瞬小十郎かとも思ったが、あいつならauraよりも先にvoiceが来るはずだ。
何があったのかとそちらへ向かえば、backに何かいるんじゃないかと思うくらいドロドロとした何かを従えた月宮の姿。
「随分と荒れてんじゃねえか」
「どうした眼帯仕事はいいのか」
「だから政宗だって言ってんだろうが」
「好きに呼べって言ったのはテメェだぜ」
適当に声をかけてやれば返って来たのは幾分と低い、けれど昨日までとさして変わらないword。
こいつは自分の感情を殺すのに慣れすぎているのが分かって、思わずfaceから笑みが消えていた。
さっきまでauraを出すほど何かあったのは確かなくせに、俺には何も悟らせようとしない。
それは俺が単なる雇い主だからか?
「城下で何かあったのか?eyebrow(眉)の間に皺が出来てるぜ」
「放っとけ。テメェにゃ関係ねェよ」
ぐさり。
soundをつけるならこれだ。
月宮と俺との間に、見えないくせに決して通り抜けられないbarrierでもあるみたいな。
「殺気っつーかaura垂れ流しで言われてもな。今のお前なら小十郎と張り合える」
「何でだオイ」
それを何とか払拭したくて、それが出来なくても少しは改善できないかとわざと軽い調子で言う。
月宮はわずかに呆れを滲ませるだけだった。
「だから―――」
「政宗様、城下にて魔物が」
だがそれも忍の報告でどこかに吹っ飛んだ。
自分でも分かるくらいに焦った声で奴かと聞き返せば、恐らくとの返事。
今まで何度も奥州の地に現れ、蹂躙して消えた魔物。
今度こそ仕留めてやると意気込む俺を余所に、月宮は軽々とwallの上に乗った。
「方角どっちだ」
「そこから二時の方角へ」
動揺せずに答えるってお前すげぇな。
つーか待て月宮お前何する気だ。嫌な予感しかしねえぞそれ。
「了解。ちっと壊れるだろうが勘弁してくれや!」
ぐ、と獣のように身を丸めた月宮が足に力を込めた瞬間、何とも言い難い鈍い音がした。
続いて石や漆喰が剥がれ落ちて地面にぶつかる音も。
「―――どんなlegしてるんだよ…!!」
月宮が乗っていた辺りは、綺麗に半円を描いて崩れていた。
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