戦国への来訪者

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「……聞いてどうする」

「理解したいと思った、それでは駄目か」

「お偉い殿様が俺なんぞの話を聞いてどうする。憐みのつもりなら答える気はねェぜ」

「憐み…憐みなどではない」


信玄公は緩く頭を振り、茶を一口啜った。
パリポリと軽快な音を立てながら沢庵を咀嚼する月宮を見て、信玄は一度息を吐く。


「お主は血の繋がらぬ男を父と呼んでいるのであろう?その心を聞きたいと思うたのじゃよ」

「…………」


沢庵を飲み込み、茶を飲んで喉を潤した月宮はパチリと箸を置いた。膳の上には何も残っていない。


「―――その話をする前に、軽く俺らの組の事を話させてくれ」

「おお、構わぬよ。むしろそれも是非聞きたいものじゃ」

「それと……おい猿飛。隠れて聞くくらいなら降りて来い、その方がやりやすい」

「はいはい、っと…本当にムカつくくらい気配に敏いんだから」


嫌味を含んだ佐助の台詞を『褒め言葉だな』と流して、月宮は姿勢を正した。


「俺が所属してるのは関中大家十三組、十三番月宮組。忌み名を、『異形衆』」

「「―――!」」


静かに2人は驚愕した。
並ぶ言葉の全てを理解できた訳ではないが、一番最後の言葉だけは嫌でも理解できる。



「俺達がいた関中っていうのはほぼ円状の土地を持つ複合国家だ。中央部の大家一番にして総締の皇(スメラギ)一族を初めとして、4つの地方に3つずつの大家が存在し統治している」

「統治という事は…天下が大平されている、という事か…!?」

「当たりだが実状的に外れと言わざるを得ないな。本当の意味で平和なのは皇が統治する中央部、通称“都”だけ。そこ以外は魔物が跋扈し生きる事と戦う事が同義な場所さ」


そこで佐助は政宗達に聞いた事を思い出した。

町人も農民も、戦えなければ生きていけない世界。



生きるために戦う。
生き残る為に、殺す世界。






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